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――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

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 「イールドカーブの逆転」と題する新たなホラー映画がやって来た。ウォール街を席巻するこの映画の目玉は、身も凍るような正体不明の力だ。それは人々の心の中に忍び込み、ケーブルTVのニュースに一喜一憂させ、金融市場にパニックを起こす。

 長期債の利回りが低下して短期債の利回りに近づくにつれ、われわれが幾度となく思い起こすのは、過去5回の景気後退(リセッション)に先立って逆イールドが発生していたことだ。調査会社プラトルの分析によると、企業の電話会議(特に金融機関)では、イールドカーブ(利回り曲線)に言及する回数が着実に増えている。だがどの程度心配すべきかについては、逆イールドが本当に景気後退の予兆となるのか、または景気後退を引き起こすのか、あるいはその両方なのかということが決定的な要因となる。

 短期金利は米連邦準備制度理事会(FRB)が決定し、長期金利は債券市場の投資家が決める。FRBが雇用とインフレを安定させながら景気の「ソフトランディング」を目指し、金利を緩やかなペースで引き上げる中、イールドカーブは過去2年にわたりフラット化の傾向にあった。だがこの数カ月のフラット化を主導したのは債券利回りの低下だった。一般的な解釈は次のようなものだ。投資家はFRBが利上げを急ぎすぎており、経済を景気後退に陥らせる恐れがあると考えている。

 これは、イールドカーブがリセッションを予兆しているという意味だ。しかし利回りが反映するのは将来の見通しだけではない。利回りは債券の需給に応じて変動する。2000年代初め、中国などの貿易黒字国は手にした資金を米国債につぎ込んだ。このいわゆる「過剰貯蓄」により債券価格は高止まりし、利回りは低下した。2008年以降は、FRBや各国・地域の中央銀行が景気刺激策として数兆ドル規模の国債買い入れ(いわゆる量的緩和=QE)を実施した。FRBのアナリストの推定では、QEにより2017年末時点で利回りは約0.85ポイント低下した。