東名高速道路あおり運転事件で、自動車運転死傷処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われた石橋和歩被告(26)に横浜地裁(深沢茂之裁判長)は14日、あおり運転と死亡事故の因果関係を認め、懲役18年(求刑・懲役23年)の判決を言い渡した。石橋被告の蛮行が2人の生命を奪った事実は明白なのに、罪に問えるかどうかが公判の争点だったことは一般の方々に分かりにくく、理不尽に感じたに違いない。そんな中、良識ある判断をされた裁判員には敬意を表したい。現行法でも「殺人罪」の適用は十分に可能との指摘もあったが、神奈川県警と横浜地検は適用を見送った。しかし、あおり運転の末に相手を死亡させたとして殺人罪で起訴した例はある。被害者は通り魔に殺されたのも同然で、誰もが納得できる重い刑罰の適用か、新たな法の制定が求められる。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
「人間的な感覚」が欠落?
判決によると、石橋被告は昨年6月5日夜、パーキングエリアで静岡市の萩山嘉久さん(当時45)から駐車方法を注意されて逆上。萩山さん一家4人が乗るワゴン車に妨害を繰り返し、東名高速の追い越し車線上に停車させ、大型トラックによる追突で萩山さんと妻の友香さん(当時39)を死亡させたうえ、姉妹2人を負傷させた。
誤解を恐れずに言えば、石橋被告はいま、日本中の憎悪を一身に浴びていると言っていいだろう。これまでにも飲酒やひき逃げなどで、複数人の生命を奪った悪質な交通事件はあった。しかし、ここまで連日、大きく扱われた事件は記憶にない。
ではなぜ、この事件がここまで注目され、石橋被告に憎悪が向くのか。
テレビの映像でご覧になられた方も多いだろうが、実況見分であくびを何度も繰り返し、笑みを絶やさないふてぶてしい態度。産経新聞の面会要請に「俺と面会したいなら30万からやないと受つけとらんけん」(原文ママ)と金銭を要求するなど、かなり人間的な感覚が欠落しているという印象を受ける。
公判でも反省しているとは微塵(みじん)も感じられない姿勢に、取材した司法担当記者も一様にあきれ果てていたようだ。
そして何より、弁護側が無罪を主張。しかも、その無罪主張が荒唐無稽なものではなく、専門家によっては「罪状が成立するのは困難ではないか」との指摘もあり、ネットでは関連記事にかなり過激な書き込みも見られた。
なぜ「無罪」主張が可能なのか。