ロシアで事業を営むユリ・ダヤコフ氏は、国連制裁により、ロシア極東で雇用する北朝鮮人200人の建設労働者チームの解散を迫られている。だが、ダヤコフ氏には秘策があった。国際社会から認められていない、遠く離れた親ロ派の小国に派遣するのだ。ロシアには、ダヤコフ氏のように、制裁違反により米国の逆鱗(げきりん)に触れることも恐れず、北朝鮮との取引を維持しようとする事業主や朝鮮系の市民が存在する。数は少ないながらも、彼らの意志は固い。彼らは国連制裁の順守期限ぎりぎりまで待ち、国連制裁から離脱するようロシア当局者に働きかけてきた。ウラジーミル・プーチン大統領は2017年、西側諸国や中国と足並みをそろえ、北朝鮮の核開発に対する国連の制裁を支持した。だがダヤコフ氏のような起業家にとって、プーチン氏の予想外の決定は、ロシアの経済・政治的利益に反するものだと映る。ロシアは北朝鮮との経済関係を絶つことで、自国の経済に打撃を与え、アジアにおける地政学的な影響力を低下させるというのだ。