
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第99回(2025年8月14日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
嵩といせと六原
3人の掛け合いが楽しい
舞台の稽古場に呼ばれた嵩(北村匠海)。勝手に舞台美術スタッフとして出演者たちに紹介される。
六原(藤堂日向)は、悪気はないが考える前に口からポンポン言葉が出てしまう性分だそう。
嵩といせ(大森元貴)と六原の掛け合いはテンポがよく楽しい。
大森はインタビューで「たくやは、子どものときから芝居が好きだったのでしょうから、立ち振る舞いのテンポ感を、これまでの『あんぱん』の登場人物とは変えて、やや演劇的にしてみました。
(北村)拓海くんからはそれが非常に演じやすいと言ってもらえて。僕が選んだ方向性で大丈夫そうだと安心しました。匠海くんからの言葉が一つの指針になっています」
と言っていたが、北村が演じやすいと言っていたというのがなるほどナットク。これまでかなりゆっくりした口調だったが、この3人は速い。「独創的っていうか変人っていうか個性が強すぎるんだ」と嵩が言うように、異端であり天才であるという雰囲気がよく出ている。
のぶ(今田美桜)との会話のテンポも気のせいか少し早くなっている。
六原がほかの仕事を全部辞めてミュージカルに専念しろと言ったが「とっくに辞めてるわ」とノリツッコミみたいなことをしていた。それをのぶが可笑しそうに聞いている。家に訪ねてきた六原を見て、嵩とは合わないのではないかと、蘭子(河合優実)と話していたのだ。
ずけずけ言うから繊細でのんびりした嵩は困惑してしまうのだろうけれど、六原みたいな人がいてくれたほうが刺激されて、嵩の感性にも火がつきそうだ。