• ハリケーン被害の教訓を生かす
企業は株主によって、気候リスクに関する開示を拡大するように圧力をかけられる公算が大きい。この動きをけん引する一因になるとみられるのが、金融安定理事会が設置した気候関連財務情報開示タスクフォースである。議長を務める前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏は、企業がシナリオ分析を実施することなどを提言している。
ランキング8位のメルクは、25%の拠点が日本や米国東部で台風やハリケーンのリスクに、20%の拠点が米国、スイス、中国、韓国などで洪水のリスクにさらされている。ケネディ氏は過去数年間、同社のグローバル・サプライチェーンの責任者として、事業に混乱をもたらす要因を特定し、対応策を追求してきた。同社は南アジアに非常に多くの拠点を有し、気候リスク、資源リスク、コンプライアンスリスクを抱えていた。そこで同氏は、欧州で代替的なサプライチェーンの構築を開始する一方、生産拠点の一部を米国に移し始めた。こうした大規模な活動には入念な計画が必要となる。同氏は「規制上の綿密な審査の対象となるため、製薬サプライチェーンの移転と調達には長い時間がかかる」と語る。
昨年秋、ハリケーン「フローレンス」が米国の東海岸に接近したことを受け、ケネディ氏のチームは行動を開始した。焦点となったのは、ノースカロライナ州とバージニア州に位置する2つの拠点である。これらの拠点では、はしかなどのワクチンや病院用品の製造、医薬品の包装を行っていた。チームメンバーは防災計画を確認し、大規模な混乱に備えて発電機などの非常用設備を準備した。一部の社員は工場で寝泊まりを始めた。フローレンスの接近を踏まえ、ケネディ氏は予防措置として工場を閉鎖した。その後、フローレンスは進路を変更し、メルクは打撃を免れた。2日後、工場は再開された。
ケネディ氏は次のように語る。「われわれはマリアから多くのことを学び、フローレンスに応用した。気候変動は企業に良い影響を及ぼす場合もあれば、悪い影響を及ぼす場合もある。どちらに転んでも問題がないように準備しておく必要がある。どんな状況でも、最終的に何が起きるかを予測することはできない」



