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自分で道具を買わずに“ものづくり”ができる!?
会員制工房「テックショップ」は
製造業再生のコンビニになるか?

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第198回】 2012年5月30日
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 テックショップは、連続起業家のジム・ニュートンによって2006年に創設された。自分の発明物を組み立てるために工房を作ったが、それを使いたいと人々から要望を聞くにつれ、ここにビジネスチャンスのあることを感じて創業。現在は全米で3300人を超える会員が各地のテックショップに出入りしている。

 テックショップでは1ヵ月の会費が125ドル、年間では1200ドル程度。大型の機械にアクセスできることを考えると、ここではコストの面でもアイデアを手軽にかたちにさせてくれるというわけだ。数ヵ月だけ集中して製品のプロトタイプを作ってみることもできるし、ずっと通い続けて、いろいろなアイデアを断続的にかたちにし、製品として売れるかどうかを試し続けてみることもできる。アメリカの起業家は「ガレージで発明する」のが定説になっているが、現在の機械技術はますます高度化している。自分でそんな機械を揃えるのは難しくても、テックショップに来ればアップデートされた技術が使えるのだ。

 テックショップで生まれた製品には、さまざまなものがある。スマートフォンに差し込むだけでクレジットカードの処理装置となって、スモールビジネスの経営者たちに人気のあるスクウェア、iPadケースをクラシックな職人技で作り上げて話題を呼んだDODOケースなどはよく知られている。発展途上国の新生児を暖めるエンブレースは、その後GEヘルスケアが提携した。

 テックショップは現在、企業や政府関連組織との提携も進めている。デトロイトのテックショップはフォードと提携し、フォード社員がアイデアを試せる場所を提供している。また、さまざまな基礎技術の開発をサポートしてきた米国防総省のDARPAもワシントンDCでのテックショップのオープンに一枚噛むといううわさだ。

 ものづくりのためのコンビニエンスストア。テックショップは、いわばそんな風にして、アメリカのものづくり熱を支えている。アメリカには近い将来、製造業のルネッサンスが起こると言われるが、テックショップのようなインフラがそれを後押ししていることは間違いない。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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シュンペーターの創造的破壊を地で行く世界の革新企業の最新動向と未来戦略を、シリコンバレー在住のジャーナリストがつぶさに分析します。

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