昨今、20~30代の若い世代を中心に、育児や家事に精を出す既婚男性が増えている。“イクメン”という新語もすっかり定着し、昨年から厚労省が「イクメンプロジェクト」を立ち上げるなど、国を挙げての後押しも見られる。家庭内の役割に目覚めた“パパ”向けに、育児や家事のコツを教える講座なども開かれている。

 しかし、そうしたプロジェクトや講座の内容を見ると、「ちょっと待てよ」と思うことがある。主旨が「ママを助ける」あるいは「ママを支援する」など、舞台の主演はあくまで女性で、男性は助演の扱いというケースが少なくないようなのだ。

 幼い子どもを持つ筆者も、「育児や家事を担っている」と親戚や知人、友人に話すと、「手伝ってえらい」「協力的で良い」などと、チヤホヤされることがある。しかし、これもサブ的な評価だ。

 もっと男性がメインになれるイクメン像はないものか。そんなことを考えていたら、ピッタリの戸建て住宅を見つけた。大和ハウス工業の共働き子育て世代向け住宅「xevo Li」(ジーヴォリアン)である(10月6日販売開始、目標年間販売棟数は1320棟)。ターゲットは、ずばりイクメン。最大の特徴は、従来の子育て住宅におけるテーマの定番だった「ママ目線」「子ども目線」に加え、「パパ目線」にも配慮したことだ。

「パパ土間」のイメージ。モデル棟の見学者の反響は大きく、即決契約する事例も出ているそうだ。

 たとえば、玄関に土間スペースを広げた「パパ土間」といったアイテムを設置。自転車の修理や、最近流行りのDIY(日曜大工)など、男性が得意な能力をフルに発揮できる空間だ。雨の休日は、パパを中心に家族が楽しく過ごせる場所となる。付随する大型収納空間「メガ土間ストレージ」には、DIY関連などの趣味や遊びの道具をたっぷりと置くことができる。

 2階には「ひろびろバルコニー」がある。奥行き1.2m以上(最大2.6m)を確保した非常に余裕のあるつくりだ。子どもと一緒に望遠鏡で星空を眺めながら語らうなど、男性ならではの育児イメージが掻き立てられる。

 大和ハウスによると、今回のイクメン向け住宅の企画は、2010年春から動き出した。しかし、当初はなかなか設置するアイテムが決まらなかった。世の中にイクメン向け商品や住宅などが存在せず、参考にできるものがなかったことが大きな要因だ。

 そのため、同社では雲をもつかむ思いで、最適なアイテムを探る。「たとえば、『パパがアイロン仕事を手際良くできるアイテム』『パパが週末に男の料理に腕を振るえるプロ仕様のキッチン』など。社内では、これぞまさにイクメン住宅に相応しいと考えた。しかし、ターゲット層に受容度をアンケートなどで調査すると、ウケが悪く、あえなくボツに。他にも多くの提案がボツになった」と、同社広報部は話す。

 一方で、調査で好評だったアイテムもあった。「パパ土間」や「ひろびろバルコニー」である。「ウケの良かった提案の共通項は、パパが家族と一緒に何かができること。つまり、今の若い世代が目指す理想のイクメン像は、家族の絆を大切にする『心優しきパパ』だった」(同社広報部)。

 アイロンや料理ができれば、ママや子どもに一目置かれるかもしれない。だが、基本的に1人作業で、コミュニケーションは図りづらい。それに比べ、「パパ土間」や「ひろびろバルコニー」は、家族と密に交流できる。家族の前で格好つけるより、家族の中で優しくありたい――。そんな、現代イクメンの“パパごころ”を大いにくすぐるアイテムなのだ。

 また、いずれもパパが主役となれる育児空間であり、今までの住宅にはあまり見られなかった提案であることも大きなポイントだ。すなわち、育児・家事でパパがサブ的な「支援」ではなく、「分担」というあるべき姿に一歩踏み出せるものである。そういう意味でこの住宅は、イクメンを「支援」という第一世代から、「分担」という第二世代に進化させるきっかけになるだろう。今後もこうした「真のイクメンへの脱皮」を促す商品やサービスに期待したい。

(大来 俊/5時から作家塾(R)