虐待する親から子どもを引き離すことが、直接子どもの安全と幸福につながるとは限らない。

「今回の千葉県の事件のように、SOSを出した子どもの秘密を漏らし、父親に共有するようでは……。秘密保持の欠落から、子どもはさらに窮地に追いやられます」(マユさん)

 子どもは、家庭の内部告発がしたいわけではなく、ただ自分の安全と安心を求めているだけだ。

「まずは、子どもが話す言葉を信じて聞いてくれる大人がいて、秘密を漏らさないこと……でしょうか。保護以前に、虐待から一時避難的に離れられる環境も必要だと思います。学校の保健室のような、なんでも話せる環境。それから、ふらっと立ち寄れる学童保育や児童館。家庭の状況が差し迫っている場合には、子どもシェルターのショートステイも」(マユさん)

 見る目や聴く耳を持つ大人たちが、子どもたちのメッセージを受け止めても、具体的にできることがないと、子どもは「結局、社会は自分を見捨てるもの」と“学習”してしまうかもしれない。

母親の「セーフティネット」に
なれない残念すぎる生活保護

 ともあれ、夫からのDV被害を受けている母親が、自分自身と子どもを守るためには、一時的にしても夫から離れるしかない。新しい傷が加わらない安全な環境で、まず積み重なった心身の傷を癒やす必要がある。

 しかし、母親には経済力がない。長年のDV被害によって心身を蝕まれた母親には、すぐに働いて子どもを養うことは困難だ。かつての職業キャリアも収入も人間関係も、DVの結果として失われているだろう。すると、生活保護しかない。