健康志向の高まりを受け、運動する時間がないならないで、せめて外食のときくらい気を遣おうと、「とりあえず生」をぐっとこらえて「ホッピーください」が板についてきた方も多いのでは?
「低糖質、低カロリー、プリン体ゼロ」という特長を持つホッピー。健康診断の数値を気にする世代のみならず、若年層や女性の間にもファンが急増中だ。
ここ数年ですっかり居酒屋の定番メニューと化したホッピーだが、従来からの飲み方では、ホッピー然としていて面白くない。平たく言えば、おっさん臭い。そんなこともあり、ホッピー人口が増えるにつれて、飲み方のバリエーションが豊かになってきている。
白ホッピーと黒ホッピーを5:5の割合で割った「ハーフ&ハーフ」、梅酒をホッピーで割った「梅ッピー」、トマト焼酎をホッピーで割る「トマッピー」などなど、当初は個人の楽しみ、むしろ実験的だった飲み方を、今や堂々とメニューに載せている居酒屋もある。
「甲類焼酎、その中でもキンミヤ焼酎以外を割るなんて、その時点でホッピーじゃない!」というファンがいる一方、「美味しく飲めればそれでいいじゃないか」という穏健派のんべえが多いのは、ホッピーが庶民の味方だからか。
ホッピーの製造・販売元であるホッピービバレッジが推奨する飲み方「三冷主義」を紹介すると、以下の通りだ。
(1)ホッピーを冷蔵庫で冷やす。
(2)焼酎(25度の甲類焼酎)を冷やす。
(3)ジョッキを冷やす(水に濡れた状態のまま冷凍庫で凍らせるのがオススメ)。
上記の「三冷主義」を忠実に守り、お客さんに提供する居酒屋も増えてきたが、氷と焼酎が入ったジョッキグラスにホッピーを添えるのが、いまだに定番だ。
ユニークなのは、販売元が推奨する飲み方をあえてしないのが主流となっている点だ。氷を入れることでかさが増し、その分安価に提供できるといった理由はあろうが、なによりホッピーの存在が“自由”の象徴だからではないだろうか。
ホッピーが産声を上げたのは、終戦後の昭和23年。食糧難の時代に、一般庶民にとって高嶺の花だったビールの代用品として愛飲されたのが、ホッピー誕生の背景にある。人々が自由を羨望していた時代の飲み物が、なにかと窮屈なこの時代にウケているのは、『三丁目の夕日』に代表されるレトロ回帰の風潮や、「ホッピーの置いてある飲食店は高くない」といった安心感、さらにはホッピーに自由の匂いを感じているからではなかろうか。
飲み方のよい悪いを問うのでなく、飲む人にとって最も心地よい自由な飲み方をする。それがホッピーの魅力だろう。
(筒井健二/5時から作家塾(R))