千鶴子は社是として「商業を通じて地域社会に奉仕しよう」を掲げ、「ジャスコの信条」と「ジャスコの誓い」を作り、行動規範として全従業員に配布、唱和させた。さらに同年4月にはジャスコ厚生年金を設立。7月にはジャスコの人事制度の柱ともいうべき「ジャスコ大学」を設立した。

 東証・大証・名証各市場第二部に上場を果たした1976年には、上位職トップマネジメントの育成のため、ジャスコ大学大学院を創立する。経営に関する政策問題を取り上げ、ケースメソッドやビジネスゲームなどの体験学習も採用した。

 千鶴子はこのように、人事専門経営者として、今日から見ても数々の新しい施策を行った。そして1977年、役員の定年である60歳になると、あっさりと未練なく退任したのだった。

◆小嶋千鶴子の人生哲学
◇「私の歳まで生きたらどうするの?」

 千鶴子は102歳だ。彼女はしばしば、元従業員たちに対し、「あんた、私の歳まで生きたとしたらどうするの?」「これからのほうが長いから」と言う。相手にセルフマネジメントを促しているわけだ。

 千鶴子は、自分の健康に人一倍気を遣ってきた。食生活を正し、健康診断は必ず受ける。健康管理は自分自身のマネジメントであるという考えのもと、健康管理ができていない社員には厳しい評価を下し、その社員を責任あるポストにつけることはなかった。

 またこの質問には「リタイア後の生活費をどう確保するか」という問いも含まれている。年金収入しかなければ、長い人生を生き抜けないからだ。

 さらに「リタイア後の人生をどう過ごすか」も問うている。千鶴子は60歳でイオンを定年退職した後、趣味の人生を生きている。夫と穏やかな人生を過ごすとともに、陶芸三昧の毎日を過ごしているという。私設美術館を開館したり、気に入った作家による企画展を開催したりもした。

 いまや、人生100年時代だ。若い内から人生設計し、準備をしておく必要があるということだろう。

◆小嶋千鶴子の経営哲学
◇現場は宝の山

「問題あらへんか?」――千鶴子は店を巡回したり、従業員と会ったりすると、この言葉をかける。このひと言によって、仕事で困っていることはないか、お客様からの苦情や商品の品切れ、上司・部下の関係、そしてプライベートに問題はないかを尋ね、手を差し伸べようとしているのだ。