貿易赤字が「定着」
近づく財政危機

 もうひとつの「崖」っぷちは、貿易赤字と財政赤字の問題だ。

 日本の貿易収支は、リーマンショックで円高に振れて赤字になった後、為替レートが元に戻ったのに、貿易黒字は大きく減少している。

 リーマンショック直前の2007年の貿易黒字は約14兆円だった。2016~17年に再び黒字になったが、その額は約5兆円で、かつての3分の1程度にとどまった。

 そして2018年には、米中貿易戦争の影響もあって、再び1兆2000億円の貿易赤字(速報値)に転落した。

 かつて高い世界シェアを誇っていたスーパーコンピューター、半導体、液晶製品、携帯音楽プレーヤーなど見る影もなく、逆に、スマートフォンなど通信機器や医薬品などの輸入が増えている。

 対米貿易黒字の大半は自動車で、それも数量ベースでは増えておらず、円安によって見かけの売り上げや利益が増えているだけだ。対中輸出は、工作機械や部品などの中間財が中心で、中国の産業の動向に依存している。

 日本の産業衰退は1986年の日米半導体協定以降に始まったが、アベノミクスのもとでも、産業の衰退を食い止めるための、正しい処方はされてこなかった。

 原発推進やリニア新幹線、東京オリンピック・大阪万博の大規模公共事業とカジノといった時代遅れの「成長戦略」をとり、また「新自由主義」に従っていくら規制緩和を行ったところで、新しい産業は生まれない。

 それどころか、これでは産業の衰退をますます深刻化させる。

 今やなけなしの自動車も、春から本格化する実質上の日米FTA交渉で、輸出制限や高関税賦課などのターゲットになりかねない情勢だ。

 世界で起きている電気自動車(EV)転換に立ち遅れれば、石油などの化石燃料輸入を大幅に減らすエネルギー転換でもなければ、日本は2020年代半ば以降に大幅な貿易赤字が定着していく危険性がある。

 もちろん、海外投資の収益である所得収支が大幅に増えていけば、貿易赤字を穴埋めして経常収支の黒字を保つことができる。実際に、資金が国内投資に向かわず、海外投資が増える中で、所得収支が着実に伸びてきたことは確かだ。

 しかし、高齢化と産業衰退が続けば、伸びも鈍化していくだろう。