ソフトバンクの孫正義氏Photo:DW

 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が率いる「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」。10兆円規模のこのハイテク投資ファンドに対して、二大出資者であるサウジアラビアとアブダビの政府系ファンドが、ビジョン・ファンドの運用を担うソフトバンクへの不満を募らせている。火種となっているのは投資先の評価額の高さや、投資判断に対する孫正義社長の影響力の大きさだ。

 サウジのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)とアブダビのムバダラ・インベストメントは、ビジョンファンドの資本のうち約3分の2を拠出している。両ファンドを満足させられなければ、孫氏が追加資金を確保したり、新ファンドを立ち上げたりすることは難しくなる。

 複数の関係者によると、PIFとムバダラは非公式の場で、ビジョン・ファンドが一部投資先に支払った金額についての不満をあらわにした。また関係者の1人は、まずソフトバンクが投資してからその株式をより高い金額でビジョン・ファンドに移管するという手法について、PIFが懸念していると話した。

 一部の投資家はPIFに対し、孫氏がファンド幹部の投資判断を却下することがあり、ファンドの意思決定のプロセスが混沌(こんとん)としていることから、土壇場で判断が覆ることも多いと不満を漏らした。

 2017年半ばの立ち上げ以来、ビジョン・ファンドが明らかにした投資などは総額約600億ドル(6兆6600億円)に上る。投資先には配車サービスの米ウーバー・テクノロジーズや、共有オフィス賃貸の米ウィーワークも名を連ねる。関係者によると、全体の4分の3程度の出資先は決定済みで、ファンド幹部はさらに数十億ドルの調達を検討している。

 ビジョン・ファンド、PIF、ムバダラはいずれも関係は良好だとし、PIFとムバダラはビジョン・ファンドの戦略、ガバナンスへの支持を表明している。

 複数の関係者によると、両者の緊張の一因は、過去の出資や出資待ち案件の評価額の高さにある。ウィーワークのほか、顔認識技術を開発する香港のセンスタイムなどがやり玉に挙げられている。