

しかしながら、筆者が共通して感じたのは、このような見解を持つ人の多くは、言わずもがな、組織の上層部に位置しています。そこで危惧されるのは、こうした人たちの「バイアス」が足かせとなり、経理部の人材育成のスタンスが凡庸で、方法論も形骸化されていないか、という点です。
その一方、筆者が講義する経理スタッフ向けのセミナーや研修の場では、受講生のワークなどを通じて、自身が問題視している経理部内のシステムやそれらを改善するための具体的なアイデアなどを、堂々と発言する参加者の姿を見ることが少なくありません。
もちろん、人材にも多様性があります。今のポジションで充分に満足している人、上昇志向ばかり強くて実力が伴っていない人など色々だと思いますが、もしあなたが経理部のマネジャークラスであれば、部員1人1人を見る際、自分自身にバイアスが隠れていないかを客観視するよう、お勧めしたいのです。
たとえば、「Aさんは物静かだから、マネジャースキルは必要ない」「Bさんはハキハキしているから、部下の育成を任せるか」といった判断をしているならば、それらに妥当性があるかどうかを自問自答してみてください。
こうしたところが等閑になっていては、未来の担い手にフィットするような育成策など見出せるはずなどないのです。
まずは、あなたの部下ではなく、あなた自身に焦点を絞ってメスの入れどころを探らなければ、これまでの育成策についての再考は難しいはずです。そこがクリアになった時点で、ようやく育成の方法論について見直しができるでしょう。次に、具体的なところを説いていきます。
筆者も含め、大多数の人々はこれまでの人材育成のやり方を否定されることに対し、歓迎しないはずです。ただ、自分たちで再考しながら、徐々により良い方向性へ進める手法であれば、前向きに取り組めるのではないでしょうか。以下に3点の再考ポイントを紹介します。