正門を入ってすぐに見える三階建ての7号館正門を入ってすぐに見える3階建ての7号館

「自由闊達の校風のもと、挑戦し、創造し、貢献する生き方を目指す」という学校目標を掲げる戦後生まれの「筑駒」の卒業生は1万人を超える。その半分以上は東京大学に進学し、官僚や研究者など有為の人材を輩出してきた。少子化の中、この唯一無二の国立男子校はどのような道を進むことになるのだろうか。(ダイヤモンド社教育情報、撮影/平野晋子)

山田忠弘(やまだ・ただひろ)
筑波大学附属駒場中学校・高等学校中学副校長

2025年は7割が東大に合格!唯一無二の存在「筑駒」の現状と課題

1971年東京・新宿生まれ。筑波大学附属駒場中学校・高等学校(第38期)、東京大学文科Ⅲ類から文学部英文科卒業。塾勤務の後、目黒学院中学校・高等学校と暁星中学校・高等学校に勤務、2008年に英語科教諭として入職。研究部長、中学学年主任、教務部長を経て、25年から現職。

7割が東大に合格した2025年

――156人の卒業者数に対して、東大合格者数が117人(うち現役生92人)と25年は特に多かったようです。内側からご覧になっていて、何か変化はありましたか。

山田 授業や勉強に真面目に取り組む年次だったということでしょうか。普段から遅刻をしないとか、生徒の生活態度でだいたい分かります。それぞれの学年の雰囲気には担任団の影響もあるかもしれません。私のころは文IIIなら文学部(と教育学部)でしたが、最近は進振りで割と自由に他の学部にも行けてしまうようです。早稲田大学は受験者が多く(25年は100人合格、14人進学)、慶應義塾大学は医学部(同14人合格、2人進学)だと(医学部以外の)東大とで迷うようです。 

――かつては東大の合格者数が65人の年もありました。入試制度を見ると、中学でも抽選後、第1次検査で4科を行い、第2次検査で音楽・図工・体育実技検定を行っていた時期も(1978~83年度)。こうした入試内容も影響したのか、筑駒が軟化して、四谷大塚の準会員でも合格できた時期もありました。これではいかんということで、中1にだいぶ力を入れて、担任団が持ち上がるようにしたと聞いたことがあります。

山田 まず希望ありきで調整しますが、最近は担任希望が減っている傾向にあります。どの学校もそうだと思いますが、保護者対応など大変なことが多いです。

――担任をやっても待遇はほとんど変わらないでしょうし、担任に向いていない先生も最近では多いでしょう。

山田 組み合わせというのもあります。その学年で同じ教科から複数担任になることができないなど、いろいろ難しい事情もあります。 

――最難関校では海外大学進学も話題となることが多いのですが、筑駒はいかがでしょう。

山田 年に1人か2人ですね。今年は、シカゴ大学とメルボルン大学に1人ずつ進学しました。高校生の時に海外留学を経験している生徒が目指すことが多いようです。

――学校としてはどのように対応していますか。

山田 海外の大学に進学した卒業生を呼び、希望生徒向けの説明会を行います。高3生は文化祭の後から受験勉強に本腰を入れますが、海外大学はそれより前から準備が必要ですし、書類によっては高2の終わりから用意しないといけない。推薦状などは英語科がコメントを書くことが多いです。

――書類が重要ですね。筑駒生なら書くことはいろいろあるでしょう。

山田 数学や理科など、国際科学技術コンテストに出場するのが一番手っ取り早い。世界大会で海外の生徒と交流して、自分も行ってみようかなと考えるようです。高卒から直接でなくても、とりあえず東大に行っておいてから探す、という安全策を取る人もいます。

――私立では短期留学や海外研修も盛んですが。

山田 希望者には、台湾の台中市立第一高級中学、韓国の釜山国際高校への海外派遣研修があります。欧米に行くとなると1桁違う費用負担が必要となりますから、今後の募集については慎重に検討しています。

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