先だって、国際宇宙ステーションへ貨物を輸送し、無事地球に帰還した宇宙船ドラゴン。このドラゴンの成功は、民間企業による宇宙飛行時代がいよいよスタートしたことを世界に知らしめる画期的なできごととなった。

 ドラゴンを送り込んだのは、宇宙ベンチャーのスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ。通称「スペースX」として知られる企業だ。創業は2002年。たった10年足らずで、宇宙飛行という夢のような分野で実力を見せつけた。

 スペースXは、創業数年後から精力的にロケットの発射実験を繰り返してきた。いくつかの失敗もあったが、何社かある民間宇宙ベンチャーの中でもっとも資金に恵まれ、もっとも積極的に事業を拡大している存在だ。

 今回は、打ち上げロケット「ファルコン9」が無人宇宙船ドラゴンを搭載し、所定の軌道に投入。ドラゴンはその後宇宙ステーションとドッキングして貨物を届け、再度大気圏に戻って太平洋上に帰還するという、9日間の日程を終えたわけだが、スペースXでは今後、ファルコンを再利用型に、そしてドラゴンを有人宇宙船へと作り替える開発を進める予定だ。それが実現すれば、低いコストでのロケット、宇宙船製造が可能になり、一般人の宇宙旅行もますます射程距離に近づいてくる。

 すでに、新進の気性に富んだシリコンバレー関係者を中心に宇宙旅行への関心は高まっており、これまで存在もしていなかった新しい産業や関連事業がこれから大きく花開く可能性も高い。それだけに、今回の成功はその発火点として熱い注目を集めているのだ。

“ミダス王”のような起業家
創業者イーロン・マスクとは

 スペースXを創業したのは、イーロン・マスク。彼がより広く知られているのは、高級電気自動車会社テスラの創業者、およびCEOとしての顔だろう。2003年にテスラを創業し、電気自動車のロードスターを開発することを発表した際には、世間から眉唾もので見られたものだった。だが、富裕層を中心に次々と買い手がつき、今やテスラは押しも押されもせぬ電気自動車界のスターとなっている。

 マスクは、テスラ以前にもソフトウェア開発会社を創業して3億ドルで売却、さらにペイパルを共同創業してイーベイに15億ドルで売却したという経歴の持ち主。触れるものをすべて黄金に変える、ミダス王のような連続起業家というわけだ。現在は、太陽光発電の別のベンチャー企業にも投資中である。