家電から宇宙事業まで。三菱電機のビジネスは手広く、まさに“総合電機”。事業の選択と集中が進まないと言われてきた総合電機のなかで、三菱電機が高収益の筋肉質経営へと変貌を遂げた理由は何か。今後の課題とともに迫った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

「スマートグリッド関連事業で、2015年度までに売上高1兆3000億円を目指す」

 11年10月19日、三菱電機は兵庫県尼崎市と和歌山市にある、スマートグリッド実証実験設備の本格稼働を発表。その会見の席で、山西健一郎社長は、目標を高らかに宣言した。

 三菱電機がいうスマートグリッドとは、太陽光などの自然エネルギーも含め、エネルギーの最適な組み合わせによる安定供給を実現する送配電網システムのこと。

実証実験設備内にある工場建屋の壁面には、「スマートグリッド」の文字が大きく書かれている

 尼崎市の実験場では、太陽光パネル2万枚が敷き詰められており、一般家庭約1000軒分の発電出力に当たる4000キロワットを発電できる。また、水力と火力の発電模擬装置も設置されていて、自然エネルギーとの組み合わせを試すことが可能だ。

 自然エネルギーを導入する場合、日照時間や風の強さなどで発電量が左右されてしまう問題がある。そのため、発電から配電に至るまでの電力系統にかかる負荷を安定化することが重要だ。

 そこで、実験場には電力の需給バランスや電圧の維持などを管理するオペレーションセンターがあり、コントロールの可否を検証する。また、余った電気は蓄電池にため込む仕組みだ。

 この実証実験設備を見ればわかるように、スマートグリッド事業は発電から電力の使用に至るまでのあらゆる場面にかかわるため、必要な製品やシステム、サービスは多岐にわたる。

 そこで生きてくるのが、三菱電機の事業領域の広さなのだという。上図のように、三菱電機が扱う製品は、家庭電器などの身近なものから、原子力発電所の関連機器や通信衛星にまで至る。

 ほかにもセキュリティや通信、交通や電力系統制御などの各種システムも提供しており、「機器とシステム、両方を売るビジネス」(山西社長)ができるというわけだ。