6月13日に7年の旅を終えて地球に帰還した「はやぶさ」の話題は、閉塞感漂ういまの時代にあって、私たちに夢や希望を与えてくれました。あれから約1ヵ月後の7月16日、はやぶさの後継機「はやぶさ2(仮称)」の開発研究の妥当性を審議する文部科学省宇宙開発委員会推進部会において、開発に約164億円(機体開発費148億円、運用経費16億円)が必要との試算が示されました。

 機体開発費については、「はやぶさ」の約127億円を上回ることになりますが、その理由として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、信頼性の向上や新しい装置の追加、原材料価格の上昇などを挙げています。私たちに夢を与えてくれた「はやぶさ」ですが、現実的には「夢=プライスレス」とは行かないようです。

 日頃、学生たちと話をして感じることですが、私の学生時代よりも「夢と現実との距離」が短くなったような気がします。言い換えるなら、「壮大な夢」を描く前にまず「現実」を見てしまい、「夢が現実的になっている=夢が夢でない」という感じがするのです。

 物心がついた頃には、携帯電話もスペースシャトルも既に現実のモノとして存在していたいまの学生たちにとっては、夢を描くこと自体が難しくなっているのかもしれません。しかし一方で、私たち大人たちが、若者に夢を与えられていないことも大きな問題だとも思います。

地銀が注目する
宇宙ビジネスの可能性

 7月14日に日本宇宙フォーラム(JSF:宇宙の開発に係る科学技術の振興を目的に調査研究を行なう財団法人)と、横浜銀行/広島銀行/伊予銀行(愛媛県)/山陰合同銀行(島根県)の地銀4行が、「連携協力に関する協定書」を締結しました。民間金融機関とJSFとの提携は日本初とのことです。

 このニュースは、メディアではそれほど大きく取り上げられませんでしたが、「宇宙と地方」「夢ある宇宙開発と現実主義の銀行」という異質なもの同士の組み合わせに、私は興味が湧きました。

 この協定の狙いとしては、

・国および宇宙航空技術を有するメーカーと各地域の企業との間で、共同研究や宇宙利用を促進する
・宇宙航空技術と民間企業が有する技術を融合し、新たなビジネスを開拓する

ことなどが挙げられており、JSFと地銀4行はコーディネーターとしての役割を担うことになります。