この状況を前に、中央政府が提唱・実践する減税や企業コスト軽減策は陰に隠れてしまい、企業家たちが政策からの恩恵を感じるようにはなっていない。

銀行に中小企業への融資を
強要する地方政府の役人

 最近、地方の国有商業銀行が地元の政府幹部に呼ばれ、地元の民間中小企業に対する融資を増やすように指示を受ける状況が発生している。

 広発銀行の某支店長は次のように現状を形容する。

「政府の役人は中央に媚を売りたいがために我々を急に呼びつけては無理難題を課してくる。我々だって日頃の業務で安全性や見込める利益などを考えた上で意思決定をしている。役人は政治的立場からなりふり構わず民間の中小企業へ融資しろと命じてくる。正直議論にならない。我々も途方に暮れている」

 この支店長によれば、同行を含め、中国の国有銀行が大手国有企業に対して優先的に融資をするのは、その政治的考慮以外に、安全性、そして往々にして利益への見込みが動機となっているという。

「特に広東省の民間企業家や個人事業主はビジネスプランや経営状態という意味で透明性に欠け、説明責任を果たそうという意識も低く、こちらとしても信用が置けないケースが少なくない」(同支店長)。

 合理的・理性的判断の帰結として民営企業ではなく国有企業に融資をする場合が少なくないということであろうか。実際、この点は筆者がこれまで各地で中国のバンカーに伺ってきた話と一定程度合致する。

“国有企業改革”の実態や民営企業家をめぐる問題点に関しては筆を改めるとして、少なくとも中央政府の“鶴の一声”によって民営経済・企業を取り巻く環境が改善されるような、虫のいい話ではなさそうである。

(国際コラムニスト 加藤嘉一)