Dr.スランプに見る
地方が抱く都会への敵意

 そして、このような地方の「自虐」好きに、もうひとつ大きな影響を与えたエンタメ作品がある。1981年から放映されて、36.9%という歴代アニメ視聴率第3位(1977年以降放映)をマークした「Dr.スランプ」だ。

 40~50代の方ならば説明がいらないだろうが、この作品の舞台となっている「ペンギン村」はド田舎である。しかし、主人公のアラレちゃんをはじめ、村人たちはみな幸せに暮らしている。

 一方、彼らと対比される形で、ビルが立ち並び、便利なものが溢れる「都会島」というところも登場するのだが、そこで暮らしているのは、イナカ者を蔑み、都会暮らしを鼻にかけるいけ好かない人たちである。同じ時期に雑誌連載されていた「翔んで埼玉」に登場する「東京都民」と同様のキャラクターなのだ。

 30年以上前の「地方の自虐ネタ」には、その裏に「都会への敵意」が潜んでいることがよくわかる。

 これ以前の地方PRというのは「一村一品運動」に代表されるように、おらが村にしかないもの、強みを日本中にアピールしようという「ふるさと自慢」のスタイルだった。わかりやすいのが、徳島の「阿波踊り」である。

 最近、「内紛」や見物客の減少など残念な話題で注目された「阿波踊り」は、400年続く伝統芸能とされているが、そういう評価になったのはここ最近である。

 徳島城の落成祝いで城主・蜂須賀公が行った無礼講の際の踊りが起源とされているが、「この話はどこの観光起源にもありがちな起源伝説で、実は蜂須賀氏の入封以前からあった行進式の盆踊り」(読売新聞 1971年8月9日)なのだ。

 では、日本のいたる所でやっていた行進式の盆踊りが、なぜここまでの観光資源となったのかというと、今でいう「観光ブランディング」の賜物である。

「阿波踊りというのは昭和のはじめ、土地の郷土史家が観光振興のためにつけた外向きの名前で、地元の中年以上の人々はいまでも盆踊りと言っている」(同上)

 実は昭和の初めまで、四国は「観光未開の地」などと揶揄されていた。商魂たくましい阿波商人たちは、その評価を逆手にとって、どこにでもあった盆踊りを、徳島にしかない「奇習」として売り出したというわけだ。