「30年ぶりに兄と会話できた!」引きこもり高齢家族に起きた奇跡「8050問題」が注目されるなか、引きこもる兄への見方を180度変えることによって、30年ぶりに話ができるようになった弟がいる。コミュニケーションの再生は、どのように実現したのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「8050問題」の象徴のような家族
引きこもる還暦の兄に弟は……

「8050問題」が注目されるなか、引きこもる兄への見方を180度変える「意味の転換」によって、30年ぶりに話ができるようになった弟がいる。

 東京都に住む間野成さん(51)の兄(60歳)は、実家で母親と同居しながら、30年以上にわたって引きこもる生活を送っている。

 兄は引きこもる前、工場で仕事をしていた。仕事を辞めた理由は、今も誰にもわからない。兄は当時、ハローワークに通っていたものの、仕事が決まらず、そのまま引きこもってしまったという。

「ああ、あそこの会社は、30年前からブラックだよ」

 間野さんは最近、兄の存在をカミングアウトできるようになってから、故郷の同級生に教えてもらって「そうだったのか」と思った。

 兄が引きこもり始めたのは、1988年のバブルの頃。間野さんが初めて「引きこもり」という言葉を知るまでの10年ほどの間、「無職の兄がいる」と表現する以外、周囲にどう説明していいのかわからなかった。

「兄がそういう状況になってしまうと、弟としても人と話がしにくくなっちゃうんですね」

 間野さんは兄の存在を恥だと思って、ずっと隠してきた。

 小学校に入学したとき、兄はすでに高校1年生だった。その頃から、第1志望の公立高校を受験で失敗した兄が怖い存在になり、話せなくなっていた。兄は、第2志望で入った私立高校で数学が1番の成績だった。以来、母親の口癖は「やればできたのに」だった。