極寒のなか母親と娘が孤立死
「8050問題」をどうするか?
80代の親が収入のない50代の子と同居したまま、外とのつながりが途絶えて孤立し、生きていくことに行き詰まる「8050」世帯の現実が、また顕在化した。
札幌市のアパートの一室で、82歳の母親と引きこもる52歳の娘の親子が、飢えと寒さによって孤立死した姿で見つかったのだ。
3月5日付の北海道新聞の記事によると、親子の遺体が見つかったのは、今年1月初めのことで、娘は長年引きこもり状態だったという。
死因は、2人とも「低栄養状態による低体温症」で、1月6日、検針に来たガス業者が異変に気づき、アパートの住民が室内に入ったという。それぞれ飢えと寒さによる衰弱で、年末までに亡くなったと見られている。
今回は、北海道新聞の丹念な取材によって、高齢化した「8050」親子の背景や課題が浮き彫りになった。しかし、このような悲劇はほんの氷山の一角に過ぎない。
同紙の記事から、筆者が注目したキーワードを抜き出していくと――。亡くなったと推定される時期は、母親が「昨年12月中旬」、娘が「昨年末」。冷蔵庫は「空」だったが、室内には「現金9万円が残されていた」。
親子は「週に1回だけ近所の銭湯に通っていた」。娘は昨年12月26日、アパート近くの自動販売機でスポーツドリンクを買い、「ペットボトルを抱えて何度もしゃがみ込み、ふらふらしていた」姿が目撃されている。
母親がアパートに入居した1990年当時、「収入は年金だけ」で、「生活保護や福祉サービスは受けていなかった」。娘は学校を出てから就職したものの、「人間関係に悩んで退職し、ひきこもり状態に」なった。「障害者手帳や病院の診察券などは見つかっていない」ということは、診療を受けようとしなかったのか、受けたくても受けることができずにいたのかもしれない。
「親子は近所づきあいを避け、周囲に悩みを漏らすこともなかった」
母親と交流のあった女性が数年前から、生活保護を申請するようアドバイスを続けたものの、母親は「他人に頼りたくない」からと頑なに拒んだ。親子は、どこからも支援を受けることなく、未診療だった可能性も高い。