大きな冒険は
社会も巻き込んでいく必要がある

阿部さんは「大きな冒険をやっていくんだったら、社会も巻き込んでいかなければならない」と語る
阿部さんは「大きな冒険をやっていくんだったら、社会も巻き込んでいかなければならない」と語る Photo:M.O.

――冒険家というのは、できるビジネスマンと似ていますね。

 そうかもしれませんね。大きな冒険をやっていくんだったら、社会も巻き込んでいかなければならず、自由気ままなだけでは誰も応援してくれないと思います。そこはプロフェッショナルとしてやりつつ、関わってくださる皆様への感謝を忘れずにいることが大事だと思います。

 自分が好きでやってきたことが、今の社会で取り上げられたり、皆さんがお金を出してくれたりとか、すごくうれしいと思います。初めは僕のことを誰も理解してくれませんでした。でも、続けるうちに皆が応援してくれるようになって、この間は板橋区から区民栄誉賞までもらっちゃって。

 本当に好きなことで評価される人生でよかったなと思っています。僕自身が楽しいので。だから、そういう楽しさを多くの人たちに伝えていきたい。できれば子どもたちに、僕のように冒険家で生きていけるんだったら、いろいろな生き方ができるはずだと伝えていきたいですね。

――最近の1日の過ごし方はどうなっているんですか?冒険家の1日って、子どもたちには想像もつかないんですけど。

 最近は、結構現実的なことしかしてないです。南極終わってから取材が多くて、あとお世話になった人への挨拶回り。そしてメールもすごく来るので、それに返信したりとか。SNSの時代ですから、即レスしないと忘れてしまうので。当然、トレーニングは欠かさずやっています。

 また、土日の休みもないですから。かつ人力車業もあります。ただ完全予約制なので、お客様に僕の方から時間を提示させてもらっています。乗ってくれる方は、皆さん応援してくれる方です。

 あっ、最近は確定申告を自分でやっているので忙しいですね(笑)。

板橋区の町工場にソリを作ってもらい
犬型ロボット「aibo」を同行させた

板橋区の町工場で作ってもらったソリを引く
板橋区の町工場で作ってもらったソリを引く 

――話が変わりますが、今回の南極点到達では、板橋区の町工場にソリを作ってもらいましたが、どんな経緯だったんですか?

 3年前に、僕がグリーンランドの冒険から帰ってきた直後、東京都板橋区の松本精機の鈴木敏文社長とお会いしたとき、オリジナルのソリを作ってくれる人を探しているという話をしたら、快諾してくれました。

 既存のソリもいいんですけど、今回の冒険ではMade in Japanというものにこだわりたかった。日本製で、作ってくれた人の思いが乗ったソリと一緒に南極点に行きたかったんです。ソリを引いて歩いているときに後ろを見たら、ソリを作ってくれたおやっさんたちの気持ちや愛情を感じられるということが支えになりました。彼らも通常業務で忙しいなか、身を粉にして製作してくれました。今回、南極点までソリを持って行けて、心からホッとしました。