東日本大震災後、日本では発電の約8割は、地球温暖化につながる火力発電でまかなわれている。風力などの再生可能エネルギーは、電源として不安定だ。

 一方で、福島原発事故以来、国内では原発再稼働がほとんど進まないまま。国民の間には「脱原発」の思いがこれまで以上に強まっている。

 中西氏にしてみれば、日本のエネルギー供給の現実を直視し、国民の間で議論が深まることで、原発の意義が再認識されるべき時ということのようだ。

 しかし2月に、原発ゼロを目指す市民団体から討論を申し込まれると、「議論にならない。水と油だ」と拒否。そして3月11日の経団連の定例会見でも、「エモーショナル(感情的)な反対をする人たちと議論をしても意味がない」。再び原発反対派への反発をあからさまにした。

 国内での原発再稼働と新増説へと、一刻も早く歩みを進めたい。そんな思いが強くにじむ。

海外での建設事業、頓挫
“国内回帰”を図るメーカー

 背後にちらつくのは、自らが会長を務める日立製作所が、英国で進めた原発建設計画の頓挫だ。

「ホライズンプロジェクト」。現地子会社の名前をとってそう呼ばれる計画は、英国の西部に位置するアングルシー島に、新たに原発2基をつくり売電までしようというものだった。

 だが、今年1月17日、日立は「経済合理性からこれ以上の投資は限界だと判断した」として、計画の「凍結」を表明する。

 福島事故以来、原発の安全規制が世界的に強化されるなかで、建設費が高騰。原発は、もうからない事業になってしまった。

 官民がタッグを組んで日本メーカー製の原発を海外に売り込む「原発輸出」では、昨年12月に三菱重工業などがトルコで手がける案件が断念の方向で調整に入ったことが表面化した。

 かつてはリトアニアやベトナムへ輸出する構想もあったが、脱原発の世論を受け、現地政府が拒否の姿勢に転じて頓挫した。

 日立はすでに計画に3000億円近い費用を投じ、新潟県の柏崎刈羽原発などと同型の原子炉で英国政府から認証も取っていた。日立の計画は、原発輸出で実現性が残る唯一の案件になっていた。

 その頓挫だけに、大きな衝撃をもって受け止められた。

 中西氏が「国民的議論」をぶち上げたのは、そんな騒ぎのさなかだ。