中部電力浜岡原子力発電所を視察した中西宏明・経団連会長中部電力浜岡原子力発電所を視察した中西宏明・経団連会長(右から2人目) Photo by Ryo Horiuchi

 口は災いのもとである。日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長は2月14日、中部電力浜岡原子力発電所を視察した。視察後、中西会長の発言が物議を醸した。

 住民の間で原発に慎重な意見が根強い理由を記者団に尋ねられ、中西会長は「原子力発電所と原子爆弾が頭の中で結び付いている人に両者は違うと理解させるのは難しい」と答えた。

 原発を誤解している人が多いとも取れるこの発言が、反原発派の怒りを買い、翌日には経団連会館前でデモまで起きたのである。

 ある程度の摩擦は予想できただろうに、中西会長はなぜこのタイミングで浜岡原発をわざわざ視察し、過激とも取れる発言をしたのだろうか。

 浜岡原発といえば、民主党政権期に発生した2011年の東日本大震災後、当時の菅直人首相が超法規的措置で“止めた”原発だ。その是非はともかく、政治が原発への姿勢を明確にした事例である。

 その後に与党へ復帰した自民党の安倍晋三政権は、国策民営である原発へのスタンスが曖昧だ。その理由について「首相は強固な政権運営を重視している。それを阻害する原発には首相自身が触れたくない」(政府関係者)といわれている。