顔認証Photo:PIXTA

――筆者のジェラルド・ベイカーはWSJエディター・アット・ラージ

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 人類はテクノロジーの進化が生み出すディストピアに陥り、一挙手一投足が巨大かつ悪意に満ちた力によって監視・収集され、われわれの足を引っ張るために利用される――。そう心配する人にとって、先週のニュースは朗報だ。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、ニューヨーク都市圏交通局(MTA)――ニューヨークの地下鉄、鉄道網の大半、有料の橋やトンネルを(筆者に言わせれば「ゆるく」)運営する組織――は昨年7月、ある橋を高速で走行するドライバーを識別する試験プログラムを開始していた。ナンバープレート読み取り用のカメラを避けるドライバーを顔認証ソフトウエアで見つけることが狙いだった。

 MTAは19世紀のテクノロジーを活用して人々がニューヨークという大都市を動き回れるようにしているが、優れた腕前を発揮しているとは言い難い。21世紀のテクノロジーを使って市内に入る人々の身元を突き止める腕前も結局のところ、そう変わらない。WSJが確認した内部の電子メールにはこう書かれていた。「RFK(ロバート・F・ケネディ橋)での顔認証の概念実証試験の第1期が終了、失敗に終わった。許容可能な範囲内で検知できた顔はなかった(0%)」