中国はどうなるのか――2020年の未来像をめぐって、中国国内でも大激論が展開している。中でも、一部の専門家やメディアが懸念し始めているのが、中国における労働集約型企業の行方だ。
空洞化が始まる中国製造業
米企業は「自国回帰」も
中国内陸部で自動車向けの部品を製造する、ある日本人経営者がいる。2000年に工場を稼働させて以来、艱難辛苦に揉まれながらも手塩にかけて人と現場を育て上げた。
だが、彼がいま手を打っているのは、ミャンマーへの拠点シフトであり、その理由をこう話す。
「人手が集まらない」
中国の魅力は、何と言っても「コスト競争力」だった。しかし、ここで生産活動をする外資企業は、競争力がなくなり魅力を失った中国に背を向け、工場の流出を加速させている。日系企業はチャイナネクストを求めて、アジアの途上国を漂流している。
中国からの脱出は日本企業だけではない。
アメリカは自国への回帰を始めている。特に機械、電子機器、コンピューター関連など、家電を中心とした製造業がアメリカに戻る傾向が強い。
ボストンコンサルティングが106社を対象に行った調査によれば、37%が「中国から引き揚げる、もしくはそれを前向きに検討」と回答し、その要因について57%の企業が「労働コスト」と回答している。
だが、結果はアメリカ経済にとって追い風ともなる。アメリカの製造業においては200万~300万人の雇用が創出され、年間1000億ドルの生産高がもたらされるという予測があるのだ。