過去30年以上、総合重機メーカーの造船部門は、低迷を続けている。かつて、連結営業利益の50%以上を稼ぎ出していた造船は、現在10%以下に落ち込んでおり、1%を切ることもある。周期的に好況と不況を繰り返してきた造船業は、韓国と中国に抜かれて相対的な地盤沈下が進む。なかなか業界再編が進まないという問題を抱えながら、日本の造船業はどこへ向かうのか。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

 日本の造船技術を海外、それも中国に出してよいのか──。その是非をめぐって批判もあった川崎重工業の中国展開だが、最近では業界内の空気が変わってきた。

 この4月3日、国内2位の総合重機メーカー川崎重工の船舶海洋(造船)部門は、2回目の大きな勝負に打って出た。川崎重工は、2007年に中国企業と合弁で設立した中国のDACOS(大連中遠造船工業)への出資比率を引き上げ、間接投資から直接出資に切り替えたのだ。これまで以上に中国事業へコミットするという意思の表れであり、不退転の決意を世界に対して見せつけた。

 1995年、川崎重工は低迷を続けていた造船部門の抜本的対策を模索する過程で、競合メーカーに先駆けて中国に一大生産設備を立ち上げる決断をした。中国海運最大手のCOSCO(中国遠洋運輸集団)との折半出資で、NACKS(南通中遠川崎船舶工程)を設立し、延べ700人以上の中国人社員を香川県にある坂出工場で教育・訓練した。ゼロから始めたNACKSだったが、現在は建造量の世界ランキングで27位に入り、生産規模では日本国内にある二つの造船所の建造量を上回る。

川崎重工の直接出資によって、実質的な出資比率が49%に上がった“中国第2工場”のDACOS。川崎重工は日本の大手造船メーカーでは先陣を切って海外に出た。生産設備の現地化に乗り出し、地歩を築いた

 今後、川崎重工は、DACOSをNACKSに続く“第2の成功事例”にすべく、自らの手による育成に乗り出す。DACOS設立時の出資比率は、COSCOグループが70%、NACKSが30%だったが、今回の株式移転でCOSCOグループが36%、川崎重工が34%、NACKSが30%となる。NACKSは、COSCOと川崎重工の折半出資なので、事実上の出資比率はCOSCO側が51%、川崎重工側が49%になる。

 川崎重工の造船部門で陣頭指揮を執る船舶海洋カンパニーの神林伸光プレジデントは、身を乗り出してこう語る。「厳しい環境が続く中で、いかに守りながら攻めるか。今後は、国内の2造船所(神戸、坂出)と中国の2造船所(南通、大連)を連携させていく」。

 一方で、競合の三菱重工業は、3月9日に行われた神戸造船所の進水式を最後に、潜水艦の建造は続けるものの、コンテナ船などの一般商船の建造から撤退することになった。2年前に発表したとはいえ、107年の歴史に幕を閉じるに至った背景には、競争の実相が様変わりしたことがあった。