桑津 (人事の)データを使われるなんて、気持ち悪い、という拒否反応だけで議論が止まってしまい、時間がかかるのが日本の悪いところですね。どうしても、エピソードとエモーションでしか物事を考えられず、事例をエビデンスとして扱って、それ以上は議論しない。HRテックにしても、こんなことができます、だけではすまなくて、「なにかいい話はないか」と求められ、「いい話」があればようやく「まねしたい」という流れになります。

 もうビジネスマナーとして、いい話(エピソードとエモーション)をするのは禁止にしてほしいですね。エピソードやエモーションとエビデンスを分けることを提案したいです。

秋山進
秋山進(あきやま・すすむ)
プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役

秋山 人間はある意味でいい加減なもので、なにごともあまり論理的に考えていないものなんだと思います。結局さっきのAIへの反応ではないですが、ポジティブかネガティブかという感覚と、エピソードの記憶とを関連づけて、頭の中にしまい込んでおき、それを必要なときに取り出してくるという行動様式なんですね。

桑津 人が足りない状態は、もう待ったなしのところまできています。IoTを本気で取り入れるかどうか、決めなくてはいけません。昔はよかったとか、人間とはこうあるべきであるとか、そういうことを言っている時代ではないのです。ですから、エピソードとエモーションを禁止するだけでなく、「検討しよう」という言葉も禁止してほしいですね。結局「検討しよう」は、「何もしたくない」と同義ですから。

秋山 IoTやAIの導入を決めるためには、そうした禁止事項のほかに、なにが必要でしょうか。

桑津 やはりデジタルネイティブでない50歳以上の人はこうしたことを決めるときに、口を出してはいけないと思います。対応能力がないですから。上の人間は報告を受けるだけでいいと思います。AIやIoTのない時代にそうでないやり方でえらくなった人たちに意思決定させる事こそナンセンスだと思いませんか。

 ある銀行でフィンテックに関する会議が行われた際、役員クラスにAPIの概念を説明するだけで、相当な時間がかかりました。これではフィンテックをいくら銀行で使おうとしても、迅速な意思決定などできません。

秋山 つまり、「エピソード」「エモーション」「検討しよう」を禁止して、「50代以上は口出ししない」(笑)。

桑津 それだけでもずいぶん事態は変わると思います。