Aさんの会社は、いわゆる「下請け」であり、IT関連や人材派遣会社などからネットニュースやコラムの制作を請け負っている。毎月、決められた本数を複数のライターが書き、Aさんたちが取りまとめて納品していた。

 あるとき、ある企業が運営するメディアに納品したコラムの1本が炎上した。あるスポーツ選手に関する言及が炎上の理由だった。言及は一文のみだったが、その内容に主にそのスポーツ選手のファンたちから、大きな批判が寄せられた。

「その一文について、確かにその選手のファンや、そのスポーツを楽しむ人たちからクレームを受けても仕方ない内容でした」

 ファンが怒って当然だと思ったAさんは炎上に心を痛めた。一方で、納得できない気持ちもあった。それはこんな理由からだ。

「炎上の原因となった一文を入れたのは、記事を書いたライターや編集を担当した私ではなく、クライアントである企業の担当者だったんです。その担当者はライター経験や編集経験のない人なんですが、『コラムを面白くするために』という理由で、記事配信の直前にその一文を入れたそうです。

 バッシングされるのは、コラムに名前が入っているライターです。それなのになぜ勝手に文章をいじるのか。あとから勝手に文章を加えて、署名のあるライターに最終確認をさせない。記事制作に関して、そういう意識の低い企業は実際にあるんです……」

 Aさんやライターからの抗議に対して、その担当者は悪びれずに「じゃあ今後は署名を外しましょうか?」と言い放ったそうである。

「お前たちみたいな無名ライターの署名を入れてやってるんだからありがたく思え、とでも言いたげな態度でした。ウェブ記事の中にはライター名の載っているコラムが多いですが、あれはバッシングを媒体ではなくライターに向けるためにやっているメディアも中にはあると思います。いわば『使い捨て』です」

 その後も勝手に誤字脱字のある文章を挿入されるなど、その担当者とのやり取りにさまざまなストレスを抱え、Aさんの会社は結局、その企業からの発注を受けなくなった。しかしその担当者はその後も「やり手」として出世しているようだという。