ITがもたらす社会の変化は、日本企業に本質的な課題を突きつけている。2012年6月、「ビジネス・イノベーションサミット2012 ~明るい未来へ向けて~ グローバル化とイノベーションで日本の未来を拓く」と題された、経営とITの課題を取り上げたシンポジウムが都内で開催された(主催:ERP研究推進フォーラム)。慶應義塾大学大学院の石倉洋子教授の「2012年、世界の潮流、日本企業の底力」と題された基調講演をはじめ、カシオ計算機やNTTコムウェア、日立製作所、京セラコミュニケーションシステムなど、各企業のグローバルビジネスにおけるIT戦略を紹介する内容の講演がさまざまに行われた。その中から主な講演を紹介する。
日本企業は、新しい時代に対応した
強みや戦う場所を見極めることが重要
「2012年、世界の潮流、日本企業の底力」と題された基調講演では、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の石倉洋子教授が、グローバル化が進む中、今後、経営とITが取り組むべき課題について提言した。
最初に、石倉教授は、「現在、世界はもろく、微妙なバランスの上に成り立っている。ITの出現により、従来の境界は意味をなさず、世界中のどこからでもモノが買えるし、売れる時代になった。一方で、富裕層と貧困層の格差が拡大している。問題はそれが誰でも見えるようになったことだ」と指摘した。そして、「今ここで起こったことが、世界全体に瞬時に影響を及ぼす時代であり、地域ごとや国ごとではなく、世界レベルでさまざまなことが起こる時代に突入している」と語った。
加えて、2012年は、全く新しい時代の始まりであり、さまざまな国の人が横一線に並んでいる状態であること、方向がはっきりしない時代であること、ハイパーコネクトであり、双方向であり、何でも情報をシェアする時代であることを挙げ、これらはすべてITがもたらしたものであることを述べた。
また、そういった時代にあって、日本企業にとって、グローバル化は当たり前であり、日々分野や地域を超えた競争にさらされているとした。しかしながら、「競争はゼロサムではなく、各国や各社の強みや特徴、ポジショニングを明らかにすれば、取り合いにはならない」と語った。
加えて、日本はもはやローコストでは戦えないため、付加価値で戦うことが重要であり、今後は、新しい価値をどうやって提供するか、その付加価値を認め、買ってくれる相手をどうやって見つけるかがポイントになると語った。さらに、過去の栄光にこだわらず、新しい時代の中での強みや戦う場所を見極めることが重要であることを強調した。