文大統領の言葉は、積弊清算やその捜査が文氏の意向とは関係なく捜査機関独自の判断で始まり、今も続いているように聞こえる。

 しかし、文大統領は、「時効が過ぎた事件でも事実関係を究明せよ」と指示を出している。文大統領にとって、積弊清算は就任直後に挙げた国政課題の第一であり、「自分が最も重視するのは積弊清算」なのである。ちなみに、就任演説では「積弊清算」という言葉は1回も使われず、国民統合をやたら強調していたという(朝鮮日報)。

 このやり取りを聞いていると、徴用工問題に関し、「司法判断を尊重する」と述べただけで、問題の解決を投げ出しているやり方と同じである。このように自分にとって面倒なことは他人に押し付け、逃げている大統領を国民が心底から尊敬できるであろうか。

うまくいかない焦りから
ますます独裁志向に

 文政権はますます独善的な政策を進めている。民主主義の基本である議会を無視し、言論弾圧に走っている。

 文政権の特徴の1つが、行政に関して未経験の人材でも、文大統領の考えに近い政治活動家を要職に就けていることである。そのため、強引なやり方で人事を断行しており、公職者の任命に関する評価が低い。現政権になって国会の報告書採択なしに任命された人事聴聞対象者は計15人。直近では「高額株投資」で物議をかもした、李美善(イ・ミソン) 氏を憲法裁判官に任命した。また、開城工団、金剛山観光事業の実施に情熱を燃やす金錬鉄(キム・ヨンチョル)氏を統一部長官に任命した時も、野党の反対を押し切って強行した。

 言論に対しても今年3月、与党である共に民主党が、ブルームバーグ記事の見出しで文在寅大統領を「金正恩(キムジョンウン)氏の首席報道官」と表現した韓国系の記者を公の席で非難した。さらに警察は、ソウル大学、延世大学、釜山大学など全国100以上の大学で文在寅大統領を「王」に例え、「経済王」「雇用王」「太陽王」と表現し、「彼(文大統領)の偉大な業績に酔ってみましょう」などと風刺したことに対し、厳しい捜査を行った。この風刺では現政権による「自分がやったら恋のロマンス、他人がやったら不倫」式の時事に対する批判も込められている。

 こうした与党や警察の締め付けに関し、米国の知韓派有識者は文大統領に公開の書簡を送り、「韓国政府は名誉棄損を乱用し、政治的に反対の意見を検閲している。この点を懸念する」と憂慮を示した。また、「国境なき記者団」や国際新聞編集者協会も、「記者は政府の応援団ではない」「記者の役割は公益の事案に対し独立かつ批判的に報じることだ」と批判している。