これを存分に楽しむには、何の気兼ねもない一人旅がおすすめだ。しかしもし淋しい向きがあるなら、三人旅がよいだろう。二人だといくら仲良しでも、最後は疲れてしまうからだ。

 居酒屋巡りの旅は、一ヶ所に二泊がベストだ。朝から夜までその町に一日中いることによって、旅の実感が深まるからだ。一日目には飲み屋をはしごして、町を把握しておこう。そうすれば、慣れてきた二日目には方向感覚もつかめて、余裕の一夜を過ごせる。

 一日目に気に入った店の暖簾を再びくぐると、お店の人は、旅の一見客がまた来るとは思っていないため、たいそう喜ぶだろう。こうなるとこちらも気分はもう常連で、話もはずむことは間違いない。居酒屋を巡る旅の醍醐味は二日目にあるのだ。

◇初めて行く旅先は下見から

 ではこれから居酒屋を巡る旅をするとしよう。著者のおすすめのプランはこうだ。初めて訪れる旅行地に着いたら、まずはホテルに荷物を預け、昼飯をかねて町の下見に出るとよい。よい居酒屋は飲み屋街とは別の旧繁華街にあることも多い。また、夜になると町の眺めは一変するので、初めての場所では路頭に迷いかねない。昼の間によく歩き、土地勘をつけておくとよい。

 そこで夜に入る店の見当をつけていこう。三、四軒の見当をつけたらホテルに帰り、夕方までぐっすり眠る。五時に出動し、最初の店で飲むビールは格別だ。

◇島の居酒屋は格別

 居酒屋を巡る旅の中でも、島の居酒屋は格別によい。島では昔から本土に頼らず、魚も野菜も調味料もすべて島内でまかなってきた。つまり自分たちだけの完結した食文化を持っている。これを島で醸し出す酒とともに味わえば感動ものである。

 島での居酒屋旅を楽しむコツは、島に着いたらビーチサンダルに履き替えることだ。素足で歩いてから居酒屋に入ると、遥かなる地に来た到達感を強く感じられる。これは島でこそ味わえる感覚だ。

 また居酒屋を出た後にも、島ならではの醍醐味が味わえる。島では常に風が吹いており、これが居酒屋を出た後の酔った頬を撫でていくのだ。最大のご馳走はこの風だと気づくだろう。