「兄貴、よくわかりました。ところで、兄貴。兄貴の口ぐせの『さわやか』って、どういう意味で、兄貴は使っているんですか?」
「あ、ヤバイ。そこ、突っ込んできたんかいな」
兄貴は、ニッと笑うと、得意げに言った。
「あのな、いっちゃん。たとえば、クルマをぶっとばすのもええんやけれどな、バイクぶっとばせば、風がバコーンとなびくやろ。あれ、『さわやか』やな」
「あ、兄貴、よく、わかりません」
「みんなが『さわやか』と思うもんが『さわやか』やねんて。みんなが見てな、ほほえましいことやったり、痛快なことやったり、感動することやったり、辛い状況を乗り切った快感だったり、美しいものだったり、スカッとすることだったり、気持ちのよくなることやったりするのが、すべて『さわやか』やねんて」
「はい」
「せやから、『さわやか』ゆうたら人が集まる、『さわやか』ゆうたら間違いない、『さわやか』ゆうたら大富豪や。のう?」
兄貴は、完全にさわやかに、ニッと笑った。
「……なるほど、兄貴、これからは、すべてに『さわやか』を意識してみます」
兄貴は、ズズズズッと、激しくカップラーメンをすすった。