「ほんでな、98%の大人がな、すでに『おとなしく』なってしまっとるわけやからな、人間がもともと持っているはずの『童心』を取り戻すだけで、『2%のごっつい成功できるグループ』に入れるわけなんやて」
「はい」

「なぜかというたらな、『童心』というのはな、自分の『好奇心の一番の源泉』やし、『一番のパワーの源』でもあるしな、『周りの人々が共感してくれる遊び心』でもあるし、『人と変わっていて、人と違っていて、面白いもの』なんやて」
 兄貴は、ポンッ!とラーメンの具を、口の中に放り込んだ。

「せやからな…、いっちゃん」
「はい、兄貴……」

「人の可能性は『童心』にあるんやて。そして、一人ひとりの童心には『個性』があってな、一人ひとり違うんやて。せやから『童心』を取り戻せっちゅうことやし、それは、ひいたら、どういうことかというたらな…」
「はい……」

 兄貴の目が、グワッと光った。

「『本当の自分を取り戻せ』っちゅうことやねん」
兄貴は、「ヤバイで、オレ、ごっついええ話してもうたわ」と言うと、ニッと笑った。

「兄貴、なるほど。自分の『童心』なんて、もう、ずっと昔に、忘れていました。でも、子どものころ、一番、『自分が自分らしかった頃の自分』は、たしかに、もっともっと、輝いていました」
兄貴は、さらに、麺をひとすすりした。

「あ~、せやろ。オレは今もな、『童心』というものを常に持っているんや。せやから、目線が子どもと一緒やねん。大人ぶらないし、おとなしくもしない、常にMAX全開で、やる気が強烈、発想が炸裂やねん。せやから、子どもに人気があるしな、子どもはオレの言うことを、よう聞いてくれるんやて」

 突然、兄貴は、一番、端に座っていた日本人に対して、「お前、体調、悪そうやけれど、熱あるんか?」と言った。「は、はい、ちょっと熱っぽいですけれど、大丈夫です」とその日本人が答えると、「ええ薬があるんや。これで、一発やで」と言って、パンッパンッとお手伝いさんを呼んだ。
兄貴、ものすごい、目端が利くというか、よく、周りを見ていて、優しいぜ。