しかし今のところ、この紅旗河プロジェクトはまだ机上の空論だ。三峡プロジェクトや南水北調プロジェクトよりも数倍の投資が必要な高難度の国家級プロジェクトなのに、意外なことに中国の中央官庁や国有企業などは参加しておらず、「善林金融」という無名の民間金融会社が懸命に推進しているだけだ。

 この善林金融は善林(上海)金融信息服務有限公司に属する会社で、同社は2013年12月14日に設立、資本金12億元(約200億円)。会社は個人独資企業で、株主と法人代表は同一人物である。しかも、この善林金融はたびたび違法行為や詐欺などによって各地の管理部門で処罰を受けている。

 2015年、水利省が「チベットの水を新疆へ移動させる計画は考えたことがない」と明言していたので、紅旗河プロジェクトも善林金融の新しい詐欺プロジェクトではないか、と疑われている。

実は外交問題を避けるための
秘密プロジェクトか

 しかし2018年1月、北京で紅旗河西部の水供給課題第二次専門家検討会が開催された。参加者は中国科学院、中国水利水電科学研究院、黄河水利委員会、長江水利委員会、南水北調総公司および清華大学、北京大学といった多くの組織団体の関連分野の専門家や教授などであった。紅旗河プロジェクトが専門家たちから高く評価され、この会議も紅旗河プロジェクトの推進においてはガイダンス的役割となるだろう、報じられた。

 そのことを考えると、旧ソ連の未完成空母「ヴァリャーグ」をマカオの無名のビジネスマンがウクライナから購入したケースと似た作戦ではないかと思えてくる。国境外へ流れていくチベットの川から取水するとなると、厄介な外交問題になりかねないから、無名で信用度もあまりない一民間企業が推進すれば、少なくとも世界的な注目を初期段階において避けられる、という考えかもしれない。

 ここまで考えて、紅旗河プロジェクト関連の情報をもう少し真面目に集めなければ、と筆者は一種の焦りを覚えた。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)