加盟店からは「1980円でも売れるのに」という声が上がったが、これは当初の値付けが980円であり、企画した北村さんはそこを曲げなかった。「1980円で売れるとしても、ヒットを出すには980円でないといけない。そこで1980円で売ってはいけないのです」と語った北村さんは、こう続けた。

「商品は値付けで決まります。『製造コストがかさんだから価格に転嫁する』なんてありえません。そんな商品なら出さない」

 一般的なアパレル企業の場合、商品の原価率は2~3割程度だ。できるだけ安く作り、宣伝をして高く売る。在庫が出ればセールを行い、それでもだめなら廃棄するというビジネスモデルである。だがワークマンの原価率は65%と、アパレル業界の平均値よりずっと高い。それでも利益を出せる仕組みができているからだ。

 高い原価率にもかかわらず、利益をあげられるワークマンの商品の鉄則は大きく3つある。

 1つ目は、独自開拓した中国や東南アジアなど海外工場との直接取引だ。さらに商品製造にあたり、価格交渉をしている。2010年にPBを立ち上げた際、社内で立ち上げた「海外商品部」が中国や東南アジアなどの工場に自ら足を運び、取引先を広げた。発足当時の海外商品部の部長は、今年4月に社長に就任した小濱英之氏である。また、たとえ製造の品質が安定したとしても、毎回複数の工場から見積もりを取る。長い付き合いになっても、値上げを要求してくるようならば平気で切り替えるという価格へのシビアさがワークマン流だ。

 2つ目は、広告宣伝費を最低限に抑えている点だ。アパレルの原価に占める広告宣伝費の割合は3%前後といわれている。例えばファーストリテイリングの売上総収入に占める広告宣伝費率は3.3%(2018年12月期)だが、ワークマンは0.4%(19年3月期・営業総収入に占める割合)と低い。また、贈答や接待も禁止で、社員は社外の人と飲みに行くことすらしない徹底ぶりだ。こうした一つひとつの出費が積み上げれば、商品の原価を引き上げてしまうからである。

 3つ目は、アパレル業界で当たり前の、セールをやらないことだ。作業服などの職人向けの服は流行り廃りがない。そのため、商品を廃棄せずとも、売れ残りは翌年また販売できる。このため在庫処分のためのセールをする必要がない。常時、定価で売ることが前提になるため、初めから売価を低く設定しても利益を確保できる。売価設定から商品づくりをスタートするのは、こうしたビジネスモデルが構築できているからなのである。