韓国の国民も
文大統領を見放しつつある
ここへきて、韓国の国民も文在寅(ムン・ジェイン)大統領を見放しつつあるようだ。5月27日には、文氏の弾劾を求める市民の請求が21万7000件に達した。20万人以上の請願が集まると、韓国政府は市民の求めにどう対応するか答弁を行わなければならない。経済運営がうまくいかず、外交面でも問題を抱える文政権を取り囲む状況は一段と厳しさを増している。
ただ、日本としては、韓国で起きていることを冷静に考える必要がある。
朴槿恵(パク・クネ)前大統領は、デモを発端にして議会から訴追され罷免された。文大統領は財閥を優遇する政治との決別を表明し、大統領就任当初は世論の高い支持を取り付けることに成功した。しかし、その後、文大統領の政策運営は行きづまり、今では同大統領の弾劾を請願する国民が増えている。
そうした一連の動きは、ある意味、無視できない事実をわたしたちに突きつけているともいえる。社会心理学的に、韓国の世論の大本には“怨念”などの感情が強いといわれる。そうした恨みとは、韓国の社会に対する不満や怒り、失望と言い換えることができるかもしれない。そうした国民の心理が、韓国の政治を振り回すエネルギーになっているとも考えられる。
文政権が世論の恨みを買った原因の1つは経済運営の失敗だ。
韓国経済の中では財閥の存在感が大きく、経済的な富を社会全体に公平に再分配することが難しい。文大統領はそうした弊害を是正しようとしたが、結果的に期待されたような効果を上げることができなかった。その結果、国民の不満や失望が増幅し、一部の国民が弾劾を求める事態に至っている。今後、世界経済の先行き懸念が高まると、韓国の文大統領は一段と厳しい状況を迎える可能性が高い。