ハイテク製品に必要不可欠で、一方の国が完全に支配する材料の供給が、米中貿易紛争の新たな火種になりつつある。双方とも、この不均衡を交渉の切り札とみている。といっても、米国製マイクロチップと華為技術(ファーウェイ)のことではない。中国は別のカードを持っている。磁石から戦闘機までさまざまな生産に使用されるレアアースメタル(希土類金属)だ。実のところ、ランタンやセリウムをはじめ、この17元素の多くはとりわけ希少ではない。しかし、その採掘と加工は著しい環境汚染を伴う。そもそも採掘が中国に移った一因もそこにある。米国の2018年のレアアース輸入額は1億6000万ドル(約173億円)で、その80%が中国産だ。中国政府は現在、2010年に続いて再びレアアースの輸出を禁じる可能性をほのめかしている。これを受け、五鉱稀土(チャイナ・ミンメタルス・レアアース)などレアアース採掘会社の株価が5月初旬に50%近く急騰した。