金融庁の金融審議会の「市場ワーキンググループ」が作成した報告書「高齢社会における資産形成・管理」が世論のすさまじい批判を受けたことで、与党や霞が関は激しくろうばいしている。
この報告書で最も注目されたのは、65歳でリタイアして20~30年生きる場合、ライフスタイル次第ではあるものの、公的年金以外に夫婦で1300万~2000万円程度の自己資金が必要であるという部分だ。
しかし、同報告書(全51ページ)を冷静に読んだ方は気付いたと思うが、それは議論の出発部分である。現行の公的年金の支給額を所与とした場合に(もともと金融庁は年金制度の担当省庁ではない)、高齢者の家計で生じ得る収入不足を見据え、個人の金融リテラシーの向上や資産運用環境の整備、認知症となった人の資産保護等々の必要性が論じられている。
「重要なことは、長寿化の進展も踏まえて、年齢別、男女別の平均余命などを参考にしたうえで、老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるか、考えてみることである」「生涯に亘る計画的な長期の資産形成・管理の重要性を認識することが重要である」。この提言は至極まっとうといえる。
公的年金だけでは足りないらしいとうすうす感じていた人は実際多いはずだ。皮肉なことにこの報告書がたたかれて話題になったことで、ファイナンシャルプランナーへの相談が急増している。報告書の意図は、想定外の展開で多くの国民に通じたともいえる。