政治的影響ばかりが注目されるが
参議院選挙が近いせいもあってか、「老後2000万円報告書」(「高齢社会における資産形成・管理」金融審議会市場ワーキンググループ〈6月3日付〉)をめぐる話題が止まらない。
国会でも連日取り上げられ、ついには金融庁の三井秀範・企画市場局長が14日の衆議院財務金融委員会で、老後資産の報告書が批判を集めている問題について「配慮を欠いた対応で、このような事態を招いたことを反省するとともに深くおわびする」と謝罪するに至った。行きがかり上、謝罪せざるを得なかったのかもしれないが、報告書自体に謝るような問題はなかったと思うので、お気の毒でならない。
筆者は、資産運用やファイナンシャルプランニングに関係する仕事をしていることもあり、この連載では本件を二度続けて取り上げているが、今回は、炎上騒動のその後の影響と、個人および政府はこれからどうしたらいいのかについて取り上げたい。
参院選を前に「争点化」したい野党と、金融を担当する麻生太郎大臣をはじめとする与党側の、率直に言って本質から外れた応酬ばかりが報じられているが、金融の世界にはそれなりに影響が出ているし、テーマ自体は重要な問題なので、これからどうなるのかは重要だ。
なお、本連載で筆者は、前々回には「報告書の方向性は悪くないけれども、金融機関のマーケティングに悪用されそうなことが心配だ」という趣旨の記事を書き、その後の異様な盛り上がりに驚いた前回は「この問題では、もっぱら麻生大臣の対応が悪い」と述べた。