一向に火の手が収まらない「老後2000万円問題」。報告書をまとめた金融庁と政権与党との間に大きな亀裂が生じる中で、その様子を陰で笑っている組織がある。公正取引委員会だ。(ダイヤモンド編集部 中村正毅)
金融庁が6月3日に「高齢社会における資産形成・管理」という報告書を公表して以降、徐々に非難の火の手が上がっていった「老後2000万円問題」。
高齢者世帯の一つのモデルケースとして、金融資産が約2000万円不足するというシミュレーションを示したにすぎなかったが、折しも7月に参院選を控え、政治家が神経質になっている時期に、鬼門の公的年金制度に対する不安をいたずらにあおってしまった感は否めない。
そのため、「(報告書の)撤回を含め自民党として厳重に抗議している」(二階俊博・自民党幹事長)、「平均値で出して、2000万円足らなくなるというのは、いささか乱暴な例示だ」(萩生田光一・自民党幹事長代行)、「猛省を促したい」(山口那津男・公明党代表)と、金融庁は永田町から集中砲火を浴びることになってしまった。
「配慮を欠いた対応で、反省するとともに深くおわびする」
同月14日、報告書を取りまとめた金融庁の三井秀範企画市場局長は、国会でそう言って深々と頭を下げた。
その様子を見て、「試算として事実を示しただけなのに」という金融庁を擁護する声が多く上がり、次第に批判の矛先が「正式な報告書として受け取らない」とした麻生太郎金融担当相をはじめ、政権与党に向き始めたというのが、これまでの流れだ。