ギリシャの再選挙では緊縮派2党が過半数を占め、同国がユーロ圏にとどまる期待が残った。ギリシャのユーロ離脱は世界をも巻き込むシステミックリスクを招きかねない。市場参加者は危機対応に余念がなく、リスク資産圧縮、ユーロ建て資産の比率削減など、かつてない規模のユーロ売り(上のグラフ)を進めた。これは逆に、危機が回避されると、ユーロが買い戻され、早々に1ユーロ=1.3ドル台回復もあり得ることを示唆する。

 ユーロ圏の債務問題は今後何年も解消しないだろう。その間は「危機(Crisis)→対策(Counteraction)→安心(Comfort)→慢心(Complacency)」の4Cサイクルを繰り返し、市場は危機モードのユーロ売りと対策確認での買い戻しを繰り返すだろう。ただし今回のユーロの巻き戻しは控えめかもしれない。欧州当局には、危機感が和らぐと政策対応も過度に鈍る傾向がある。市場は当面、ギリシャ連立政権の組成、欧州当局の対応を注視しつつ、ユーロ売りの巻き戻し方を思案するだろう。

 ユーロ相場は昨今の混乱下でも金利差を反映する相場としての秩序を保っている(下のグラフ)。2010年前半のギリシャ資産のパニック的な売りの後、欧米金利差の元のラインとは連動性が断絶したものの、元の水準よりユーロ安の位置で密接な連動性を回復している。この元のラインと現在のラインのユーロ相場の乖離部分は欧州の財政プレミアムで説明され、ユーロの変動は金利差と財政プレミアムでほぼ説明できる。