コリン・キャパニック氏はもはやクオーターバックではないかもしれないが、彼はナイキに指示を出している。米スポーツ衣料・靴大手ナイキは今週、ベッツィ・ロス国旗(ベッツィ・ロスが作ったとされる最初の星条旗)をデザインに取り入れたスニーカーを発売する予定だった。しかし、サンフランシスコ・フォーティーナイナーズ元選手のキャパニック氏は、これに反対した。エア・マックス1USAは、独立に参加した13の植民地を示す13の白い星が環状に配置された建国時代の米国旗をデザインに使用していた。このスニーカーは7月4日の独立記念日の祝日に発売される予定だったが、日の目を見ないことになった。
われわれは、ナイキ幹部らの当初の愛国的感情について、誠意あるものだったとの前提でそれを称賛する。しかし、彼らは熟慮を欠いていた。同社は昨年、キャパニック氏の白黒写真と「すべてを犠牲にすることを意味するとしても、強く信じるものがある」との言葉を前面に打ち出した広告キャンペーンを開始した。
キャパニック氏は、米プロフットボールリーグ(NFL)が2016年のシーズン後、彼との契約を拒否したのは、彼の成績が悪かったためではなく(大半の尺度から見て実際に成績が悪かったが)、彼がアフリカ系米国人に対する警察の暴行に抗議して国歌斉唱の際に膝をついたためだと考えている。ナイキのこのスローガンは、こうしたキャパニック氏の考えへの支持を暗示している。
国歌を歌うときを思い出してみよう。通常は立ち上がり、米国旗に向かって歌う。ナイキの人々は誰も、一方でキャパニック氏の国旗に反対する熱意を称賛し、他方で国旗の装飾がなされたスニーカーを出すことで矛盾が生じることを予想できなかったのだろうか。
キャパニック氏は、それに確実に気付いた。元クオーターバックの同氏は、ソーシャルメディアで旧星条旗をテーマにした靴の写真を見て、ナイキに連絡を取り、不満を伝えた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、彼はナイキに旧星条旗が抑圧と奴隷制度を示唆する侮辱的なシンボルであり、この国旗が作られた1770年代以降そうであり続けている、との自らの考えを伝えた。ナイキはニューヨーク・ジャイアンツのオフェンスラインが相手を抑え込むより速いスピードでそれを引っ込めた。
同社は既に靴を小売店に出荷していたが、キャパニック氏の歴史的および記号学的な専門知識に従い、全てを回収した。ナイキは何の説明もしなかった。同社の広報担当者は、「米国旗の古い版が使われていた」ため回収したとだけ述べるのだろう。
ナイキはいかなる理由でも自社製品を販売中止する権利がある。しかし、われわれには、抑圧や人種差別の象徴となるような米国の国旗は1つもなく、キャパニック氏の指摘―そしてナイキの暗黙の同意―は、誤った歴史観に基づく政治ショーであると指摘する権利がある。また、われわれの年齢であれば、フェミニストたちがベッツィ・ロスを抑圧の象徴としてではなく、英雄とみなしていた時代を思い起こすべきだろう。しかし、今回の話題は、現代の政治的錯乱状態を示す新たな兆候である。
また、今回のような軽率な論争が多くの米国人に対し、甘やかされた社会正義の戦士たちによって米国が打撃を受けているという、不合理とは言えない認識を与えてしまったことも覚えておくべきだろう。NFLの一部選手が示した国歌斉唱の際に片膝をつくという軽率な振る舞いにより、ドナルド・トランプ氏は大きな政治的利益を得た。トランプ氏は、もし大統領選で再選を勝ち取れば、キャパニック氏とナイキに対し恐らく礼状を書かなければならないだろう。



