ナイキがコリン・キャパニック氏を支持したのは純粋に企業の利益を考えてことだ。人種に国旗に抗議運動――。この危険な組み合わせに対し、これまで企業はなるべく関わり合いを避けてきた。しかし、ナイキの米国内の中心顧客層である若い男性は、同社にそれとは異なる態度を期待している。ナイキは米プロフットボールリーグ(NFL)の元クォーターバックで活動家のコリン・キャパニック氏を広告に起用し、同氏の見解は事実上ナイキの見解であると表明していた。キャパニック氏は、人種差別に抗議して選手が国歌斉唱時の起立を拒否していた当時、スポークスマン的役割を果たしていた。それゆえ、「ベッツィ・ロス」として知られる独立戦争当時の星条旗をあしらった独立記念日仕様のスニーカーの発売をキャパニック氏が反対したことは、同社の幹部に行動を促したのも同然だった。旧星条旗は奴隷制の時代を想起させるとのキャパニック氏の懸念を見過ごす訳にはいかず、ナイキは発売中止を決定した。キャパニック氏を無視していれば、ナイキは偽善だ、言行不一致だ、スニーカーのことしか考えていない、と言われていたかもしれない。