米国を「核合意復帰」に
誘導するのが良策

 仮に日本に食糧や石油などを運ぶ船が続々と撃沈され、日本国民の生存が脅かされるような事態になれば、海上自衛隊がどの国の船であろうが、日本に不可欠な物資を運ぶ商船を護衛し、通商路を確保するのは自衛の範囲だろう。だが今回の状況は岩屋防衛相も言う通り国家の存立に関わるような切迫した事態ではない。米国のオバマ政権が賛成して成立したイラン核合意に、米国が復帰さえすれば円満に解決する話だ。

 自衛隊法82条(海上警備行動)は「海上の人命、財産の保護、治安維持のため自衛隊に海上で必要な行動をとることを命ずることができる」と定めている。だが武器使用は警察官職務執行法に準じて、正当防衛等の場合以外には人に危害を加えてはならない。

 ソマリア沖での海賊退治に海上自衛隊を参加させた際、2009年に制定された海賊対処法(略称)は防護の対象を日本関係船舶に限らず、海賊行為の制止に武器使用も認めている。

 だが海賊は「私的目的」で行動するものと定義され、軍艦、公船に対して適用されない。イラン革命防衛隊は正規軍とは別組織だが、同国政府に属するから海賊ではない。

 もし日本が米国の要請に従い、ホルムズ海峡等に護衛艦、哨戒機、給油艦などを派遣するなら、新たな立法が必要だが、トランプ政権がイラン核合意から一方的に離脱し、イランと取引する他の諸国の企業にも制裁を加えるとし、空母や爆撃機を派遣して威嚇するのに協力するための新法を制定するならば「横車協力法」と言わざるを得ない。今回は「有志連合」に加わる国は少ないだろう。自衛隊を米軍の指揮下に入れて、日本にとって「百害あって一利なし」の行動を取らせるよりは、他の諸国と連携して米国をイラン核合意への事実上の復帰に誘導するよう努める方が良策であるのは明らかだ。

(軍事ジャーナリスト 田岡俊次)

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