だが南シナ海の人工島問題で米海軍は中国海軍と張り合っているし、米中は「貿易戦争」のさなかだ。また中国はイラン核合意からの米国の離脱、制裁再開を批判しているから中国軍艦が米軍の指揮下に入ることはまずない。

 イランは19世紀から北のロシア、南のインドを支配するイギリスの圧迫を受けたため、、日露戦争での日本の勝利を喜び、伝統的に親日だ。第2次世界大戦では中立を宣言したが、英軍とソ連軍は南北から侵攻し、イランは両国に占領された。皇帝は捕えられ島流しされて死亡した。

 日本は米国が1980年に革命後のイランと国交を断絶しても、イランとの友好関係を保ち、国交を続けてきた。イラン核合意についてもそれを支持する立場だ。

「コクカ・カレイジャス」の乗組員の報告を聞いている日本政府は、米国が「イランの犯行」と叫んでも同調せず、「誰が攻撃したのか分からない」(石井国土交通相)「予断をもって発言することは控えたい」(菅官房長官)など慎重で、中立的姿勢を示した。岩屋防衛相も6月14日「我が国の存立を脅かす恐れはない」と述べ、自衛隊の派遣を否定した。岩屋氏は7月16日にも「現時点では有志連合に参加する考えはない」と述べている。

 米国が「日本の船は日本が守れ」と海上自衛隊派遣を要求しても、日本の船会社が海外に子会社を作り、外国船籍にしている「便宜置籍」の外航船は2411隻。日本船籍の外航船はわずか219隻だから、日本船籍の船だけを守ってもあまり意味がない。政府は便宜置籍船も合わせて「日本関係船舶」と称しているが、法的にはパナマやリベリアなど、他国の主権下にある船を海上自衛隊が護衛し、必要があれば武力行使をすることが自衛権の範囲と言えるか否かは疑問だ。

 日本の船会社はパナマ等の海外子会社の株主にすぎない。外国企業への出資者の権益を守ることが自衛権行使に当たるのならば、諸外国に進出している日系企業の工場等を戦乱や暴動などの際に守るために自衛隊を派遣したり、逆に日本にある中国企業の工場を中国軍が守ることも自衛権の行使ということになりかねない。