トランプ大統領の「アメリカファースト(米国第一主義)」が猛威を振るっている。米国はイランとの対立を先鋭化させている。トランプ大統領は、イラン産原油の全面禁輸を決定し、これに対抗してイランは核兵器開発につながるウラン濃縮の拡大に踏み切る可能性を示唆した。
また、米国は中国との貿易戦争において、高官級通商協議が不調に終わったことで、中国製品2000億ドル分に課す制裁関税を10%から25%に引き上げた。また、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に事実上の輸出禁止措置を発動した。中国は即日、報復措置を表明した。
過去最強の米国が狙う
「新しい国際秩序」の構築
この連載では、米国が従来の地政学的な枠組みでは説明できない「新しい国際秩序」を着々と築いてきたことを説明してきた。米国は「世界の警察官」を続けることに関心がなくなった。だから、世界から少しずつ撤退を始めている。重要なのは、これはトランプ大統領の思い付きではなく、バラク・オバマ大統領の時代から始まった、党派を超えた国家戦略だということだ(本連載第170回)。
しかし、米国は世界の警察官をやめたといっても、弱くなったわけではない。いまだに世界最強の圧倒的な軍事力・経済力を誇っている。むしろ、「シェール革命」によって世界最大の産油国・産ガス国となった米国は、「過去最強」といっても過言ではない。
その圧倒的な力を使う米国は、まるで「世界の暴力団」のようだ(第191回)。だが、トランプ大統領は気まぐれに振る舞っているわけではない。今、米国がさまざまな国に揺さぶりをかけているのは、米国がさまざまな国々との間の「適切な距離感」を再構築する取り組みである。