ホルムズ海峡の商船護衛Photo:Reuters

――筆者のジェラルド・F・サイブはWSJのチーフコメンテーター

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 先月イランとの間の緊張が高まった際、ドナルド・トランプ米大統領は次のような衝撃的な発言を行った。「米国はイラン領海とホルムズ海峡を通過するタンカーの航路を防衛する責務を負う必要はない」。同航路の防衛は、米国が過去40年間担ってきた主要な責務の一つだ。

 代わりにトランプ氏は、米国よりもずっと多くの原油をペルシャ湾岸諸国からの供給に依存している中国と日本が、自国向けのタンカーを防衛すべきだと主張した。トランプ大統領は「われわれは、そこへ行く必要もない。米国は今や(飛び抜けて)世界最大のエネルギー供給国になっているからだ!」とツイートした。

 前週末にイランが、同国の核開発計画を縛る2015年の核合意で定められたウラン濃縮レベルの上限を間もなく突破すると発表した。この発表で緊張がさらに高まった。こうした状況下で、トランプ氏の発言は、以前よりもずっと妥当性を持つことになった。イランが過去何週間の間に明確にしたのは、同国が米国の厳しい経済制裁に対抗するための二つの武器を持っていることだった。一つ目は核開発計画を再始動させて世界に脅威を与えること。二つ目はホルムズ海峡を通過する石油タンカーの航路を封鎖して世界経済を揺さぶることだ。二つ目の脅威は、数隻のタンカーへの攻撃によって明確に伝えられた。

 これに対するトランプ氏の対応は、実質的に以下のような問いを発することだった。われわれは以前ほどこの地域の石油を必要としていないのに気にする必要があるだろうか。この問い掛けは、無謀であると同時に、極めて妥当だとも思えるものであり、多くの米国民が自らに問い掛けているものでもある。