ヤニス・バルファキス(Yanis Varoufakis)
1961年アテネ生まれ。2015年、ギリシャの経済危機時に財務大臣を務め、EUから財政緊縮策を迫られるなか大幅な債務帳消しを主張し、世界的な話題となった。長年イギリス、オーストラリア、アメリカで経済学を教え、現在はアテネ大学で経済学教授を務めている。著書には本書の他に、EU経済の問題を指摘した『わたしたちを救う経済学』(Pヴァイン)や「史上最良の政治的回想録の1つ」(ガーディアン紙)と評された『黒い匣 密室の権力者たちが狂わせる世界の運命』(明石書店)など、数々の世界的ベストセラーを持つ。2016年にはDiEM25(「欧州に民主主義を運動」2025)を共同で設立し、その理念を世界中に訴えている。
関 美和(せき・みわ)
翻訳家。杏林大学准教授。慶應義塾大学卒業後、電通、スミス・バーニー勤務を経て、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。モルガン・スタンレー投資銀行を経て、クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。主な訳書に『誰が音楽をタダにした?』(ハヤカワ文庫NF)、『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』(NHK出版)、『FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日経BP社)、『明日を生きるための教養が身につく ハーバードのファイナンスの授業』(ダイヤモンド社)など。
経済を自分の問題として捉える――訳者より
本書は、ギリシャで財務大臣を務めたヤニス・バルファキスが、十代半ばの娘に向けて、「経済についてきちんと話すことができるように」という想いから、できるだけ専門用語を使わず、地に足のついた、血の通った言葉で経済について語ったものです。
本書を原書で読み、「圧倒された」というブレイディみかこさんは、「優しく、易しく、そして面白く資本主義について語った愛と叡智の書」と評しています(「みすず」2018年1・2月合併号)。
その語りは、娘からの「なぜ格差が存在するのか」という問いに、著者なりの答えを出していくかたちで進んでいきます。その過程で、経済がどのように生まれたかにさかのぼり、金融の役割や資本主義の歴史と功罪について、小説やSF映画などの例を挙げながら平易な言葉で説いていきます。
原書の評判は経済を論じた本らしくなく、「一気読みしてしまった」「読むのを止められない」といった声が多数あがっていますが、実際、本書はまるで小説のように章を追うごとに話が深まっていき、ついついページをめくり続けてしまうみごとな構成になっています。
バルファキスは本書で、「誰もが経済についてしっかりと意見を言えること」が「真の民主主義の前提」であり、「専門家に経済をゆだねることは、自分にとって大切な判断をすべて他人にまかせてしまうこと」だと言っています。
大切な判断を他人まかせにしないためには、経済とは何か、資本主義がどのように生まれ、どんな歴史を経ていまの経済の枠組みが存在するようになったのかを、自分の頭で理解する必要があるのです。
イギリスのシンクタンク「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」によると、日本の民主主義指数は先進国では下位の22位(2018年度)に留まっており、「欠陥のある民主主義」のカテゴリに入っています。
また、労働者の自己決定権がどこまで保障されているかについて調査した経済民主主義指数においても、OECD加盟国32か国中29位(2017年度)と極めて低い位置にランクしています。日本はGDPに占める教育支出が小さく、就労しているひとり親家庭の貧困率が先進国の中で突出して高く、日本に住む子どもの7人に1人は貧困(2015年時点)と、先進国で最悪の水準です。
だからこそ、日本で多くの人がもっと経済について自分の言葉で語れるようになるといいし、本書が経済と資本主義について考えるきっかけになることを願っています。
著者の背景について触れておくと、バルファキスはイギリス、オーストラリア、アメリカなどで経済学の教授を務めてきましたが、ギリシャの経済危機の最中、2015年に財務大臣に就任しました。
そしてEU当局が主張する財政緊縮策に敢然と「ノー」を示し、大幅な債務帳消しを求め、国民投票でも緊縮策の受け入れ反対を勝ち取りました(その考え方については、本書でも「枝を燃やして山火事を防ぐ」というたとえで説明されています)。その強硬な姿勢のため、やがて、より融和的な大臣が後任に指名されましたが、その大胆な主張は世界的に大きな注目を浴びました。
さらにバルファキスは、学者または政治家らしからぬその風貌も話題になりました。革ジャンにスキンヘッドでバイクを乗り回し、マスコミには揶揄まじりに「政界のブルース・ウィリス」と書かれたこともあります。
そんな著者が書いた本書は、現代の経済の本質を鋭く突いた内容が大きな話題を呼び、ヨーロッパを皮切りに各国でみるみるうちにベストセラーとなり、いまや世界25か国で出版が決定しています。
最後に、本書のバルファキスのこの言葉を、私も若い人たちに贈りたいと思います。
「君には、いまの怒りをそのまま持ち続けてほしい。でも賢く、戦略的に怒り続けてほしい。そして、機が熟したらそのときに、必要な行動をとってほしい。この世界を本当に公正で理にかなった、あるべき姿にするために」
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一気に詰め込んだ、驚くべき一冊。
ノーム・チョムスキー「最高の経済学者であり、唯一の政治評論家だ」
スラヴォイ・ジジェク「私が最も尊敬するヒーロー。
バルファキスのような人物がいる限り、まだ希望はある」
ガーディアン紙「新たな発想の芽を与えてくれるばかりか、次々と思い込みを覆してくれる」
フィナンシャル・タイムズ紙「独自の語り口で、大胆かつ滑らかに資本主義の歴史を描き出した」
ザ・タイムズ誌「著者は勇気と誠実さを併せ持っている。これぞ政治的に最高の美徳だ」
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