一例を紹介しよう。次の試算は、退職金2000万円をすべて「一時金」にした場合と、全額を2%で運用される「年金」で受け取った場合の比較だ(年金は60歳から10年間で受け取る)。

 勤続38年で60歳定年時に退職金2000万円をすべて一時金にすると、手取りは2000万円。勤続38年だと、退職所得控除が2060万円なので、非課税の範囲内に収まる。このため所得税・住民税はかからず、額面=手取りとなる。本当に納税者にとって有利な課税方法だ。

 一方、運用率2%の「10年確定年金」を選択すると、年金額は1年あたり約221万円。10年間の受け取り総額は約2210万円なので、「一時金」よりも「年金」のほうがおトクに見える。

 しかし、退職金の「年金受け取り」は雑所得として給与や公的年金と合算されるため、所得税・住民税はもちろんのこと、国民健康保険料や介護保険料もアップするので、手取り率が下がる。

 このケースでは、60~64歳は再雇用で働き年収は350万円、65歳から公的年金220万円の受給がスタート、東京23区在住の人を前提とした。定年時から69歳までの額面収入総合計は、「全額年金受け取り」のほうが多いが、「手取り総合計」で見てみると「全額一時金」が130万円も有利という試算結果になった。

 現在の預金金利よりもはるかに高い2%の運用率であったとしても、年金受け取りすることで増える税金と社会保険料の負担は、運用益ではカバーできないということだ。

 ちなみに一時金と年金受け取りを半分ずつにする試算を加えても、全額一時金の手取り額が最も多くなる試算結果であった。

退職金を「年金受け取り」するなら
60歳から「長く」「少なく」がコツ

「一時金」と「年金」、どちらを選択するとトクなのかは、企業年金の運用率、年金額、住んでいる自治体の国保・介護保険料率などによってケースバイケースとなる。

 ただ、ひとつ言えることは、1年あたりの年金額が多額になるほど、税金と社会保険料の負担が重くなり、「一時金」のほうが有利になる傾向にあること。この点はぜひ覚えておきたい。